NPO法人FUSEとNPO法人いなかみの連携企画「個人事業」をテーマにした連載記事、第4回をお届けいたします。
今回は手作りの布小物や布雑貨、赤ちゃんや子ども用のアイテムや服を製作販売するコトコト舎のオーナー福田桃枝さんにお話を伺いました。今年で7年目を迎えるコトコト舎は、用水路の水音と小鳥の声が聞こえてくる土佐山田町にあります。
コトコト舎のものづくり
コトコト舎には各地で開かれるイベント等に一緒に出店する仲間がいますが、ここは基本1人で運営しています。委託販売をお願いしているところは高知市内に約10軒ほどあり、品薄になったら納品に行く形をとっています。後はオーガニック・マーケットなどにも不定期ですが外出店をしています。
私はもともと土佐清水で生まれて、高知市で育ちました。うちの祖母は何でも手作りできるとても器用な人でだったんですよ。手芸も毛糸の手編みもお料理も、何もかも上手なおばあちゃんで、私の姉も器用で私より先におばあちゃんにいろいろな手芸を習っていて、それがすごくうらやましかったことを覚えています。
「おばあちゃん、早く私にも教えて」と言っていろいろ習ったのが、手芸を大好きになったきっかけです。
コトコト舎の布製品は、使っていて誰かに譲りたくなるものとか、誰かに贈りたくなるものを作りたいという想いがベースになっています。壊れにくくて、丁寧に縫製してあるもの。
定番のよだれかけなどもそうですが、自分の息子がアトピーがひどくて肌がとても弱かったこともあって、小物類や服なども、縫い目や金属が直接肌にあたらないように工夫しています。お母さんが洗濯す時に汚れやすい部分が洗いやすいよう、縫い方もいろいろ工夫しています。
制作にかかる日数は、よだれかけは2日で20枚程度、洋服は一週間に5枚程度。全て流れ作業で型取りをして、オーダーが入ると同時進行もしています。だけど、子どもたち3人はまだ手がかかりますので、家事をやりつつ、仕事をまとめてこなすために集中するのが大変なんです(笑)
コトコト舎のダブルガーゼのハンカチとよだれかけは定番商品。縫い方にいろんな工夫をほどこしたやさしい手触りと風合いが魅力。丈夫で長く使えます。
心地よい古民家の作業場
コトコト舎外観、1F。広々とした空間に展示販売されている布雑貨小物。素朴で懐かしいディスプレイは見ているだけでホッとします。
以前は子どもがまだ小さかったので外で出店をしていましたが、作業ができたり、みんなで集まれる場所を探していたら、ちょうど3年前に知り合いの方から「管理してくれるのだったら好きなように使っていいよ」と、ここを管理させていただけるようになったんです。
もともと農家さんの倉庫だった物件ですが、一階は納屋で、二階は元々は住居の作りになっていました。それをコツコツ片付けて、やっと今の状態になりました(笑)。お店にはfacebookやSNSを通じて来てくださる方がとても多いんです。近所の方もお散歩の途中で立ち寄られることもたまにあったりします。
二階はイベントなどの時にお客さんに休んでもらったりするのに使うスペース。「以前はこの窓際で、外の景色が見えるように机を置いてミシンをしていました。作業の合間のお昼寝がとっても気持ちがいいんです」と福田さん。学校の建て替えで廃棄された机と椅子もぴったりマッチしています。
ものづくりの姿勢は買う方に伝わる
私自身も現在模索中ですが、他の仕事をしながら傍でこういったものづくりをなさる方も多くなりましたよね。それはその方のスタイルですごく良いと思うんですが、やはり将来的にこういったお仕事をされるならば、くれぐれも腰掛けにならないように気をつけていくべきかなぁと思うことがあります。
「片手間にやってます」という意識は、やっぱりお客様に伝わってしまうからなんです。
例えば出店したり、他の主催でイベントをさせて頂く時に見ていると、どのような商品にしても、やはり本職の方と兼業の方はスタイルがまったく違います。「自分はこれで稼ぐんだ」「これでちゃんとやりたいんだ」という気持ちがはっきりしている方は、売り方や意欲や接客の仕方が全然違うんですよね。これは私自身もとても気になるところです。
コトコト舎の仕事をしていて楽しいのは、自分なりのリズムと時間でいろんなことに変化をつけながらできることですね。時間にも融通がききますので、家事と子育てと、仕事をなんとか両立できるところがとても良いんですけれど、その反面、やはり収入は波があるので、そういう面では少し難しいかなとは思うこともあります。
未来への展望
自分も含めてですが、子どもたちが化学物質過敏症という体質があって、普通の仕事につけないというか、会社勤めがなかなかできないというのもあって私自身もこういった仕事をしているというのもあるんです。
例えば、揮発する石油系のものに強く反応してしまうんです。香りの強い柔軟剤などは過敏症の子どもにとっては本当に辛いことになってしまうんですよね。そんな背景もあって、商品を作る布はインターネットで布屋さんから直接購入しています。手芸店で布を買うと、生地についた匂いを飛ばすのにとても気を使いますので。
10年後、子どもたちが成人近くになったとき、働く場所がなくてなんとかしたいという状況になれば、今、私のしていることが何らかの基本となって、彼らなりのプラスアルファを見つけて自分でやっていけるなら、みんなで事業ができればいいなぁと思っています。
私は10年後も多分変わらず縫い物はしていると思いますね。でも、きっと変化はしていると思います。これをずっとしていくつもりではいますけど、変化に応じて形が変わって行っても、全然構わないと思うんですよ。もともと、子どもたちにご飯を食べさせたいというのが基本で制作を始めたので、ずっとこれ一本で!というよりは、何らかの新しい展開はあるだろうなと思っています。
細やかな温もりにあふれた手作りの布小物。敏感肌の赤ちゃんにも快適に使える工夫を凝らした福田さんの想い。古くて新しい、温かくて懐かしい作業場からアイデアや優しさが生まれてきます。コトコト舎の営業日や出店情報はフェイスブックページでチェックできます。
【外部リンク】
コトコト舎Facebookページ
https://www.facebook.com/kotokoto.kotokoto.plus/?fref=ts
【関連リンク】
移住者の小さな起業を応援するプロジェクト「いなか・ラボ」スタート
http://inakami.net/works/inakalabo-11381.html
提供:NPO法人FUSE
企画運営:NPO法人いなかみ
この記事を書いた人
【プロフィール】 渡辺瑠海 わたなべるみ 放送業界を経て25歳で出版の世界へ。東京でライターとして雑誌企画、書籍制作に携わった後2003年に高知にUターン。書籍、冊子を手がける。著書『田舎暮らしはつらかった』『龍馬語がゆく〜日常をハイに生きる土佐弁』『イヌキー・私とトートバッグ犬の10年』高知新聞連載『はちきん修行記訪ねて候』など。 |