【注意】こちらの記事には狩猟の写真や解体の写真が掲載されています。苦手な方は観覧を控えてください。
男が一度は名乗ってみたい職業といえば、スパイ、ミュージシャン、芸術家、海軍などいろいろあるが、そうやってあげてったらおそらくラインナップされてくるであろう「猟師」。今回は猟師のリアルについて書いてみたい。
僕はちょうど2年前に東京からUターンし、「わな」の狩猟免許を取った。大自然に囲まれた高知県香美市では、イノシシ・シカの鳥獣被害が深刻で、山や農作物を守るためには、狩猟が“必要”なのだ。やる気・元気100%&ちょっとおふざけモードで、イノシシやシカと格闘すると誓ったが、格闘以前につまづいた。まず、金だ。
狩猟免許は意外とお金がかかる
狩猟免許を取得するには、試験代・狩猟登録・ハンター保険など、ナンダカンダ2万5000円近く必要で、更新にも毎年1万8000円くらいかかる。
そこで我が町の報奨金を調べてみると、以下のようになっていた。
・猟期(11月15日~3月15日)はシカ・イノシシ(成獣)1頭につき1万円。
・猟期(3月15日~4月1日)はシカ・イノシシ(成獣)1頭につき1万円。
・駆除(4月1日~10月31日)は、シカ・イノシシ(成獣)1頭につき1万8000円。
※各都道府県で免許取得費用、猟期、報奨金などは異なります。詳しくはお近くの猟友会・市役所にお問い合わせ下さい。
※狩猟者以外は、捕獲しても報奨金は出ません。
ということは、もとを取るには、年に2・3頭は捕らないといけないということ。
たっ、たった2・3頭!?
絶対捕れるじゃん!
むしろ儲かるじゃん!
しかし、現実は違った。
技術が無いと獲物は捕れない
クソが!また逃げてやがるっっっっ!!!
あ、かかってる!
って、オレのわなじゃねぇし!!!
あのう、ぜんぜんっ、捕れないんですけどぉ? まだ4万くらい赤字なんですけどぉ?
たぶん、このままでは一生捕れない…
そこで、ベテラン猟師さんに教えをこい、いろいろ参加しまくった。わなの仕掛け方講習、わな作成講習、狩猟者の講演とか。どれもめちゃくちゃ吸収できてる感があり、そう、全部が上手くいく気がしてた。頭の中ではエレファントカシマシの「四月の風」がずっと流れてる。
だけど、ここでもう一回つまづく。シカの解体講習だ。
解体の重要なプロセス「止め刺し」
一応、これまでに、何度かイノシシの解体は経験していた。強烈なニオイに嗚咽をもらしながら、内臓を引っ張り出し、返り血を浴びながら肉を切る、のを見ていた。
もう楽勝だろう思っていた。でも、その作業には、重要なプロセスがぬかっていた。それは「止め刺し」、つまり殺すとこ。
意気揚々と臨んだシカの解体講習。ありがたいことに生け捕りで持ってきてくれたのだ。狩猟者に命と向き合う大事さを伝えるための配慮だ。
いやいやいや、その配慮、重すぎんだろっ!!
でも、そこは、山を食い荒らすシカ。シカが山を食い荒らすおかげで土砂崩れなどの自然災害が増え、川も汚れる。農作物の被害も酷い。人間の生活を大きく脅かす存在、まさに有害鳥獣なのだ。さぞ悪い顔をしているに違いない!
…。
いやん、きゃわいいっ
しかも、涙を流してすすり泣きをしている。その瞬間に感情移入してしまったから、もうその後の光景は地獄絵図。シカが弱っていくのに伴って、なぜか自分の力も抜けていく。ヤバイ……貧血になりそう。たぶんオレと同じように感情移入してしまったのだろう、ある男性が先に貧血で倒れた。
いかん、いかん!なんとか頑張れ、オレ!寿司屋が魚をさばく時に貧血になるか?ゾンビのコスプレしたヤツが鏡見て貧血になるか?
俺は「猟師」だろ?
そう言い聞かせて、なんとか我を保つ。しかし、周りの目も気になる。解体を見ているだけだったら「ニセ猟師かもしれない」と疑われる。そこで、革を剥ぐ作業だけ手伝った。
思ったより簡単に剥げる。うわぁ、なんか、すげーことしてんな、オレ。東京に居た頃は考えられなかった、てか、やりたくもなかった経験を今、自ら進んでしているのだ。環境は人を大きく変えるもんだな、うん。
あれ、少し慣れてきたぞ。てか、できてんじゃん!! 綺麗に取れてんじゃん!そう思った2秒後。
ピュっ!
包丁が血管を傷つけたのか、顔面に返り血を浴びて、貧血K.O。
その後のことは、よく覚えていません。ただ、お茶を立てていたのを覚えています。
でも、解体講習はかなり勉強になった。猟師にはまず「覚悟」と「慣れ(経験)」が必要だと学べた。よし、明日からまた頑張ろう! 早く一匹でも捕らないとなぁ。と、その二日後。
1年かけてやっと捕れた初の獲物
デーン!!!
シカ、捕ったどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
しかも、結構デカい!
とにかく嬉しい!1年かけて、やっと捕れた!地域内で会う人、会う人が「おめでとう」と声をかけてくれる。わな、やってて、よかったぁ。これでほんの、ほんの少しだけど、地域の被害が減らせる、と思いたい。そしてどうせなら、今年はお小遣い程度でも稼げるよう精進したい。(※ちなみにお肉は地域の人と分けました)
高知の野生鳥獣被害の深刻な現状
現在、高知県は、野生鳥獣被害が深刻な問題となっておりイノシシ・シカの捕獲頭数は毎年増加しているが、高齢化などにより狩猟者は減少傾向にある。たぶん他県も同じような状況だと思うが…。そのくせ、ジビエ料理が全国的にちょっと流行っている。つまりこの状況は、チャンスでもある!
あなたもぜひ「猟師」になりませんか? 特に高知はオススメですよ~。
香美市集落支援員 坂本仁
【外部リンク】
■香美市移住ポータルサイト
https://iju.inakami.com/
■農林水産省
参考2 野生鳥獣による都道府県別農作物被害状況(平成27年度)(PDF : 132KB)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_zyokyo2/h27/attach/pdf/h27-2.pdf
■高知県猟友会
http://www.kochi-ryoyu.com/
■高知県庁 鳥獣対策課
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/070201/
農林被害撲滅には、電気柵を多用するのが効率的で、コスパもよい。土砂災害多発は、戦後林野行政の過失によるもの。挿し木針葉人工林を集中爆発的に、増やしすぎたため。花粉症はっせいもしかり。イノシシは、土砂災害生き埋め、救助動物として活用できそうです。
しかは夏季下草刈り動物としても使えそうです。
電気柵を多用しても、鹿は電気柵の無い畑に集中して移動します、「お前ん所が電気柵を付けたから俺の畑があらされた!」と言わんばかりに逆恨みをされますw
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猪の止め刺しがなかなか大変だと言うことである猟師がある物の製作を依頼してきました。納品後に本人はもとより周囲も殺せないと発覚。ただ、一名は教えてもらえばやれるとうちに習いに来たが奥様に猛反対されたもよう。
猟友会全体ではなくどうも友人同士の狭い世界の話のようだ。
とにかくその狭いグループ内で殺しをワタクシが請け負わないといけない。
ワタシは動物の世界から15年離れており今はゴキブリでも殺生には躊躇するくらい。特に次回は解体もセットです。
長々となりましたがそんなこんなであなたから勇気を貰いました。
これからもご無事で。
ある物の製作依頼などでご縁があれば。
大久保さんのおっしゃるとおりかと。
シカやイノシシが山を食い荒らす害獣と見えるようになったのは、人間が山をおかしな状態に変えたからなのでは。
自らを奮い立たせるためなのでしょうが、原因を歪めてしまうと最終的には大体ろくなことになりません。
電気柵などの手段も講じず、安易に最終手段にいたるのは横着というものでしょう。
あるいは経営的にその程度の投資も不可能というのであれば普通に商売替えすべきである。人間社会も厳しい面はある。
生き物を殺すということは、止めさしなど言い方を変えても殺しは殺し、真正面から受け止めるには重たすぎるのかもしれませんが、しかしもろもろが軽薄すぎませんか。
ことが事なのですから、せめて表向きだけでも厳かに行ってほしい。ご自分の心持ちのためにも。
外国ではこうした問題にTNRも試みられているようです。
捕らえた後に避妊して自然に放つほうが頭数制限には効果的という話です。
避妊方法は経口ワクチンであったり手術であったり様々です。
そうした方法であれば貧血で倒れることもなくなるでしょう。
賞金稼ぎでしか生きていけない人からは猛反発がありそうですけども。
私の実家の田舎もイノシシの被害がひどく、電気柵を皆さん張り巡らしています。以前は漁師さんがいて、ビーグル犬を連れて、キツネやタヌキ、テンを狩っていましたが、その人が亡くなられてからは猟師は誰もいません。
特に罠を仕掛けているわけでもなく、皆の会話を聞くと「うちの畑にもイノシシのくるごとなったばい。オイがおる時はよかばってん……。電気柵もきかんときはきかんけんなー」みたいな内容が聞こえてきます。
自分も遺産でもらった田畑があるのですが、小作料をもらって皆に貸し出しているので、自分自身は特に苦労はないです。でも、みんなに何かお返ししたいなあとも思うので、猟師になって力になれないかなと思ったりもします。
でも、なったらなったで屠殺するための設備とか必要になるんじゃない?とか考えると、結局、考えて終わりになってます。
今更ですけど。
林野だなんだと言いますが、そうはいっても現状、鹿は増えていますよ。
植生への被害も関連が無いとは思えませんけどね。
一定数は電気柵も超えてくるので、母数が増えれば被害も増えるのです。
結局どこかで、増えた分を間引く努力をするしかないと思いますけどね。
捕獲はしないといけないから、流石に避妊はコストがかかる気がします。食えるなら食った方がいいと自分は思いますよ。
数年前に若い雌の猪を食べたことがありますが、絶品でした。この為だけに日曜猟師になることを検討していますが、ネットの情報が少なくて困っています。
埼玉県で鹿ハンティングしてました。
いまは便利な世の中になってまして
電気止め差し(高電圧)なる物がありますが、 もうご存知とおもいますが、
少しでも狩猟していただけるなら助かる農家は多いと思います。
今年はイノシシがCSFでかなり減りましたがシカは増えています。
猟師も高齢化で少なくなりつつあり休日猟師の為の製品開発を準備していたところです。
またよろしくお願いいたします。
はじめまして。
可能であればお教え頂きたいことがあってコメントを入れさせて頂きます。
失礼であったらお許しください。
私は狩猟には縁はありません。
長年、ブナの樹とブナの森の写真を撮っています。
森を表現するのにどうしても動物(鹿)が居る風景を撮りたいと思っています。
決めた構図でじっくり待って撮る写真です。
例えば雨の日にガスの中で水飲み場で撮る写真です。
気の長い話です。
しかし情報がないと撮れません。でれで、失礼とは思いましたがコメントを入れさせて頂きます。
余談ですがサラリマン時代に長野に赴任中、地元のハンターさんに鴨撃ちに連れて行ってもらい、愛犬のラブラドールと一緒に鴨を回収したりしていました。
石川県では白山の麓で腰にクマ除けの鈴を付けて犬と一緒にヤマドリを探して歩いたり、レトリバーとしてのラブラドール(犬種の特徴)を見るのが好きです。
ですので獲ることには無縁ですが犬と一緒に猟をする方の気持は、わずかですが理解できます。
これも余談ですが、ブナの樹を撮影中しているときに、背後でクマの声を聴いたこともあります。
高知市在住で67歳の男です。
もし差し支えなければメールを通じて交流させて頂けたら嬉しいです。
メールにてお返事いたします