鎌倉時代のこと。承久の乱に関係して土御門(つちみかど)上皇は、土佐の国に流された。
阿波の国から在所に定められた脇の磯(現在の香南市香我美町)へ移られた上皇に、豪族の原権七が慰めにと、洞窟を案内した。
その時、一行の前へ金色の小さなヘビが現れて道案内した。
人々は、このヘビを龍王の化身として、洞窟の入口に祀った。
また、上皇は龍駕(りゅうが)という乗り物で見物にこられたので、洞窟を龍河洞と呼ぶようになった。
近くの谷川などにウナギがたくさんいた。
ウナギは龍王様のお使い。捕って食べるとタタリがあった。
村人たちは龍王様を崇拝し、干ばつになると祠の前で雨乞いをした。
いつも不思議に雨が降り、村人たちは喜んで、必ず洞窟入口の小川に、ウナギを放してお礼をした。
それで、近くの田んぼには、いつもウナギがいっぱい泳いでいた。
村人たちが田んぼへ石灰をまく時は、前の日に「あす石灰を入れますから田んぼのウナギは外へ出てください」と龍王様に祈った。
すると、田んぼのウナギは一匹もいなくなった。
たまたま、血気盛んな隣村の大工が、村人の止めるのも聞かず、田んぼのウナギを捕って食べたところ、家へ戻り鉄砲で腹を撃ち死んでしまった。
村人たちは以前にもまして、龍王様を敬うようになった。
この話に出てくる龍王の化身のホコラは、今でも龍河洞入口の右手に大切に祀られています。
NPOいなかみ