人間にとって不可欠な塩。ミネラルも体の中で作れないので生命維持には必要ですが、塩ほど食品との関わりや体内で数多くの役割や機能を果たしている物はなく、不可欠という印象が一層強くあります。
今は製塩に化学製法という方法がありますが、昔の人は大変でした。
日本に岩塩はほとんどなく、昔は海辺の塩田に頼るしかありません。ということは、その塩を山側へ運ぶルート「塩の道」が全国各地にあり、有名なところでは日本海側の千国街道(糸魚川 – 松本)や北国街道(直江津 – 追分)、太平洋側の三州街道(岡崎 – 塩尻)、秋葉街道(御前崎 – 塩尻)などがあります。
当然、土佐にもあり、それは香南市赤岡町から香美市香北町を通り、物部町大栃から奥に入った別府方面、笹を越え、徳島県祖谷地域などへも繋がっていました。
この歴史は古く、遡ること江戸時代が始まる1600年前後の頃、今の香南市香我美町から吉川町にかけての海浜は一大製塩地で、赤岡では「塩市」が開かれていました。塩の道は海と山を結ぶ重要な産業道であり、塩だけでなく海の産物、山の産物などの生活必需品が相互往来して運ばれる「循環道」でありました。
今でも「赤岡往還」、「日浦往還」、「七浦往還」、「塩が峰」など、塩に関する地名が多く残っています。当時は馬の背に荷物を積んで往来した関係で、道の近くには馬や旅人の安全を祈願する「馬頭観音」や「地蔵尊」など、神社、仏閣も数多く点在しています。
しかしながら、大栃までの自動車道路が明治32年に開通以降、山と海を結ぶ基幹道路の役割は徐々に薄れ、往年の道は部分部分で山に返っていくようになります。
このままでは、地域の歴史や文化を感じるかけがえのない財産が失われてしまう。そんな危機感を抱いた有志が平成14年に立ち上がります。香美・香南に各保存会が発足し、廃道となっていたこの道に歴史的・文化的価値を見出し、完全に廃れてしまっていた獣道を復元し休憩所を整備、パンフレットの作成やウォーキングガイドの育成などの取組みを実施。
各保存会はその後「土佐塩の道保存会」として統一され、平成16年に「美しい歩きたくなる日本の道500選」に選定されてから、道の価値が広く認められるようになり、平成26年には「香美市文化財」認定、平成27年10月には「新日本歩く道。文化の道100選」にも選定されました。
この長きに渡り人々の生活を支えてきた命の道をのんびり歩くイベントがあります。往年の昔に思いを馳せながら、春の一日のウォーキングを楽しんでみませんか?
第10回 土佐塩の道30kmうぉーく(物部町山崎公園〜赤岡塩市跡)
開催日 平成30年3月24日(土)
問い合わせ先 香北観光トラベル ℡0887-59-3393
塩の道、春の遠足 其の壱(庄谷相〜黒見公園〜庄谷相)
開催日 平成30年4月14日(土)
問い合わせ先 土佐塩の道保存会事務局 ℡080-2976-4423