調査員 松村さんの「空き家調査」に同行してみた!
香美市には中山間地域の空き家情報を提供する空き家バンクが用意されており、市の調査員さんが地域に足を運び、空き家の有無を調査しています。田舎暮らしをしたいけど住む家が見つからないという悩みは、多くの移住希望者が感じているところではないでしょうか。その課題解決に欠かせないのが空き家調査。香美市はいったいどのようにして空き家を探しているのか。調査員の松村さんにお願いして、実際の空き家調査(一次調査)に同行させていただきました!なお、空き家調査には、空き状況を確認する一次調査と、所有者に賃貸や売買の意思確認をする二次調査があり、今回は一次調査への同行となります。
香美市調査員による空き家調査10の手順
空き家を探す。お街であれば不動産屋に聞けばニコニコしながら教えてくれますが、点在する山の民家の空き状況を教えてくれる不動産屋はほぼ皆無です。それならば自分で地域を訪ねて「この家空いてますか?」と聞くことはできますが、地元の人から見ればかなりの不審者です。地元の人に不安を感じさせずに空き家の情報を集め、提供する。それが市の空き家調査員の仕事です。ではその調査はどのような手順で行われているのか。松村さんの車に乗り込み、同行させてもらいながらその調査方法を教わりました。
【空き家調査10の手順】
- 訪問する地域を決め、ゼンリンの地図で名前・番地のある土地をチェック
- その地域を軽く見て回り、空き家っぽい家を事前チェック
- 地区の区長を訪問して趣旨を伝え、地図を見ながら空き家とその所有者を確認
- 2で見て回った空き家っぽい家についても区長に状況確認
- 区長に空き家調査が入ることを住民に知らせてもらうよう依頼
- 1週間ほど時間をおいてから(調査が周知される時間)地域を再訪問
- 区長に確認した空き家を訪問し、実際に目で見て確認。空き家であれば写真撮影
- 一見してわからない家の場合は、近所の住民に声をかけて実態を確認
- 確認した空き家の状態をA~Dにランク分けしてデータ化(A=優良、D=廃屋)
- ランク上位の空き家から順に、賃貸や売買の意思を所有者に確認する二次調査へ
現場で空き家だと判断する3つの決め手+α
上記の手順にも示した通り、その地区の区長さんに聞けばある程度の空き家状況は把握できるそうです。しかし空き家であると判断するには、実際に目で見て、話を聞いて、現場で確認することが不可欠となります。たとえどんな場所であれ、空き家と聞けば現場まで行くのが松村流。
松村さん「今日は2人おるき、1人で行くのが怖かったとこ行ってみようかねぇ」
いなかみ「え・・・?」
いなかみ「ぬおぉぉ~~~」
松村さん「道路に落ち葉が敷き詰められちゅう。これはずっと車通ってないねぇ」
松村さん「スリップせんろうか?前に勾配のある砂利道に入って、全然上がれんなって何回もやりなおしたことがあったがよ。あっはっは。」
いなかみ「 (´;ω;`)ブワッ 」 (※注:問題なく帰れました)
【現場で空き家だと判断する3つの決め手+α】
- 電気を検診するメーターが動いていない。メーターの配線が外されている。
- プロパンガスの栓が外されている
- 近隣住民に実態を教えてもらう
また、その家の屋根を見て屋根が崩れていたら、当然ながら空き家と判断。
Dランク(廃屋)として記録だけはしておく。
上記の写真にある家も屋根が崩れており、廃屋としてチェックし調査を終了しました。
調査員の心得「とにかく通う。そして物理的な変化を見る」
空き家調査のポイントは「とにかく地域に通うこと」だと松村さんはいいます。区長に挨拶し、何度も地域を訪問することで住民の不安も軽減。いろんなことを教えてくれるようになるそうです。ただ、その前提として、やはりいくつか注意点はあるようです。
【現地調査で注意すべき4つのこと】
- 区長や地域の人に目的をしっかり伝え、地元のためであることを強調する。
- 空き家と思われる家でも「こんにちは」と声をかけながら訪問し、呼び鈴も鳴らす。
- 鎖やロープで入れなくしているところは、例え空き家であっても絶対に入らない。
- 不動産屋の売り物件になっているところには手を付けない。民間の動きは歓迎する。
こうした注意点を守りつつ地域を何度も回っていると、以前とは異なる物理的な変化も見えてくると言います。例えば空き家だと思っていた家が実は人が住んでいる、と確認できた変化は下記のようなものです。
【よくある地域の物理的変化】
- 開いていなかった窓が開いている
- 以前はなかった車が止まっている
- 石油やガス等の販売車が止まっている
空き家に見えるような家でも、週末だけ別荘のように使っていたり、農業用に荷物を置いたり休憩したりと、田舎の家には多様な使われ方があるようです。
調査員 松村さん6つのヒアリングテクニック
電気やガスの配線など、物理的に空き家だとわかる家であれば問題ないですが、多くの場合は近所の人に直接話を聞き、住んでいるかどうかを教えてもらうことで確認することになります。しかし、知らない地域で知らない人とコミュニケーションをとるのは難しいもの。そこで松村さんが意識して実践しているヒアリングテクニックを教えてもらいました。
【調査員 松村さん6つのヒアリングテクニック】
- 持っている地図を見せて場所を確認しながら話を聞く
(説明資料などを提示すると警戒されて本音で話してもらいにくくなる)
- 空き家候補の隣の家ではなく、少し離れた家の人に話を聞く
(隣に知らない人が住む可能性を感じると教えてくれないことがある) - 近隣に住民が居ない、呼び鈴ならしても出てきてくれない、そんな時はバス停で待つ
- 生活用品や食料品等の販売車が来る地域なら、その時間を狙って話を聞きに行く
- お年寄りが多いので、とにかくわかりやすい聴き方をする
(例:×移住の空き家調査 → ◎ここに人が住んでいるかどうかを調べている) - 話を聴くときは知ったかぶらない。謙虚に質問する。
そして2次調査へ
今回同行させていただいた調査でも、すぐに住める可能性のある優良な空き家が見つかったため、次は所有者に賃貸や売買の意思確認をする2次調査に入るとのことでした。2次調査で「貸してもいい」「売ってもいい」と回答いただければ、県を通じて紹介いただいた担当不動産業者と共に、実際に所有者に会い、条件を決め、家の中を見せてもらうなどの具体的な行程を経て、香美市の空き家バンクに掲載される、という流れになります。
今後、2次調査についても、今回のように手順を教えていただき、実際に家を見るときに同行させてもらうなど、その様子をご紹介できればと思っています。 お楽しみに♪
おまけ
楽しそうに調査する松村さんにもイヤなことがあるらしい。それは「ヘビ」
ヘビが苦手な松村さん。多い日には1日で10匹も目撃したようです(苦笑)
夏場はヘビも活発に動いています。山道を歩く際はご注意を。