2020年11月発行の「いなかみだより№34」をお届けします。

香美市の移住者インタビュー02

松原家 松原 浩二さん・香奈美さん

約5年前に東京から高知市へ、そして昨年11月に香美市へ二段階移住された松原さんご一家。土佐山田町杉田にある新居と、緑あふれる景観のお庭でお話を伺いました。

松原さんご一家
松原さんご一家

松原 浩二さん 神奈川県出身。 20代は東京都内のフレンチレストラン数軒で修行。先輩シェフの薦めもあり、ワーキングホリデー制度を利用して渡仏。パリのレストランで働き、最後2ヶ月間はバスク地方の山地で、バスク豚の生産を手掛ける会社に勤務。約1ヶ月間の山ごもり生活で、放牧豚の飼育と加工を学び帰国。
松原 香奈美さん 三重県出身。 高校・短大の5年間はアメリカ・バーモンド州へ留学し、1年間のプラクティカルトレーニング(実務研修)後に帰国。地元で家業の手伝いや商社勤務を経て、浩二さんと同じくワーキングホリデーで渡仏。帰国後、結婚を機に東京へ引っ越す。


東京での暮らし

フランスから帰国後、浩⼆さんは4年ほど懇意のシェフのもとで働き、2010年には六本⽊でオーナシェフとして独⽴することに。外資系企業に勤務していた⾹奈美さんは、仕事を辞め、マダムとしてお店に⽴つことになった。オープンして半年のうちに東⽇本⼤震災が起こり、経営的に苦しい時期もあったそうだが、お店は順調に売上、実績を重ねる。しかし、2015年にお店が⼊居していたビルの建て替えが決まり、⽴ち退くことになった。

その頃、⾹奈美さんは育児休暇でお店の⼀線から退いていた。出産した東京の助産院で出会ったスリング(⼀枚布の抱っこ紐)と授乳服は相性が良く、東京でのワンオペ育児がずいぶん助けられたそうである。スリングについては、東京を離れる直前に詳しく学ぶ機会があり、NPO法⼈“だっことおんぶの研究所”の認定講師の資格を取得した。

 

東京から高知県へ

お店の移転先は都内という選択肢もあったが、お子さんが生まれたこともあり、西日本への移住を考えるように。高知県については、移住を全く考えていない2013年に旅行で訪れたことがあり、「楽しくて、美味しくて、いいところ」だと感じていて、仕事として取引する生産者も増えていた。日常の生活においても食の選択肢が豊富で、街路市や産直市、オーガニックマーケットも充実しているところも気に入った。他県の候補地もあった中で最終的な決め手は、「移住後の生活で実現したいことのイメージを一番持つことが出来たのが高知だった」とのこと。

東京のお店を閉店する前に、移住後の新たな店舗や住まいを決めて準備をし、2016年初めに引っ越すことになった。

 

約4年間の高知市暮らし

高知は美味しい魚料理のお店が充実している土地なので、飲食店の展開として考えたのが、肉料理を提供するカジュアルな肉バル。「Bar à Boucherie 松原ミート」を2016年5月に高知市追手筋でオープン。浩二さんは、いずれ食肉加工をやっていきたいと考えていたこともあり、六本木のお店時代から繋がりのあった大豊町の食肉処理施設に毎週通い、必要な資格と認可の取得も並行して行った。

一方、香奈美さんは知人・友人が全くいない新しい土地での生活。人との出会いも求め、快適なだっこの仕方やスリングの使い方を伝える講座を開催したり、授乳服の展示会(サロン)を開くようになった。また、おむつなし育児の資格も得るなど、親が楽に感じる子育ては緊急時の防災減災にもつながることも含め、知見を深める。赤ちゃんとの身体的な関わり方を人に伝えることが、香奈美さんご自身の仕事につながっていった。子育てに関するネットワークもひろがり、「子育て支援サークルままぱぁく」も立ち上げることにもなり、高知県内にとどまらず県外からも講師としてよばれるようになっていく。

 

定住地としての香美市

高知市に移住後、お休みの日は高知県内あちこちに車を走らせ、家族で遊びに出かけていたそうだ。さらなる定住の地を求めるにあたっては、高知市を中心にして東寄りの地域で浩二さんの仕事が増えてきたことや、空港や高速道路に近いという利便性もあって、南国・香南・香美市エリアを検討。香奈美さんは、とくに物部川の北岸地域に明るさや暖かみを感じて惹かれるものがあり、湖畔遊をはじめ、香北町内のカフェを訪ねることが多かったそう。

そうこうするうち、知人の縁もあって現在の土地が空いていることがわかり、物件購入を即決。当時は、草木が生い茂っていたので、こんなに景色がいい場所だとは思っていなかったという。最近では、家の中での作業が忙しくて外に出ることができない日は、「外に出なきゃもったいない!」と思いながら暮らしているそうである。

家の周りで自転車遊び
家の周りで自転車遊び
高知県材木材がふんだんに使われた住居。移住検討中の方のご相談にお答えいただきました!
高知県産木材がふんだんに使われた住居。移住検討中の方のご相談におこたえいただきました。

新居は、自宅兼「Charcuterie 松原ミート」の工房として整備(高知市内の店舗は今年3月で閉店)。現在の営業は、食肉加工に絞った形となっている。販売先は、高知市内や関東の販売店へ卸売りや、全国各地のお客さんへ直売(発送)の他、材料肉を預かり製品を納入する加工委託が多いとのこと。

香美市民に愛される地元スーパーの土佐山田ショッピングセンター(バリュー)は、松原家が香美市へ移住を決める前の2017年から大月町産「力豚(リキブタ)」を加工委託し、松原ミート製のシャルキュトリ各種を販売している。
地域の生産者を支え育てる仕組みと想いがあり、品揃えも幅広いバリューの存在は、一消費者としても、香美市を選ぶ大きなポイントとなったそうである。

商品シール:力豚×VALUE×松原ミート
商品シール:力豚×VALUE×松原ミート

 

松原家の活動…2つの柱

浩二さんは、東京時代から唯一の琉球在来豚・今帰仁(なきじん)アグー種の保存を支えたり、各生産者との協働を意識した仕事をされている。また、「松原ミート」の仕事は「いつまでも自分だけでやっているつもりはない。辞めたら引き上げて終わりというのも違うと思うので、いずれ全部を伝えたい。」とお考え。香美市内で計画が進むジビエ解体処理施設への協力も始められている。

香奈美さんは、ご自身の子育てと講師としての活動を通じて、赤ちゃんとの触れ合いが心底好きだと気付いたそうだ。子育て方針は「生き抜く力・サバイバル能力が身につけばいいな。」と明言。幸せな子育てのための支援を、香美市内外で発信されている。       

松原ミートロゴ

松原ミートFacebook▶ https://www.facebook.com/matsubarameat/

樹齢100年子超える大きな栗の木のしたでくつろぐ香奈美さん
樹齢100年を超える大きな栗の木のしたでくつろぐ香奈美さん

高知/子育て支援サークル「ままぱぁく」の活動はコチラ▶ https://ameblo.jp/mamapark-kochi/
高知/抱っことおんぶの専門家 松原香奈美さんの活動はコチラ▶ https://ameblo.jp/salon-de-nature-hanahana/

 

 

〜おまけの話〜生ソーセージ(黒コショー)を焼いてみた!

生ソーセージ初挑戦のときは焼き加減がわからず、「うーん、ちゃんと焼けたのかな…?」と不安が残りました。香奈美さんに教わった通り焼いてみたところ、皮はパリッと張りがあり、中はしっとり均一な火通りで焼けるようになりました。フライパンは、鋳物厚手の卵焼き器を使っています。

生ソーセージを焼いてセルフサンドウィッチ。濃い豚肉の旨味としっかりした塩味、コショーの香り。なんて贅沢…
生ソーセージを焼いてセルフサンドウィッチ。濃い豚肉の旨味としっかりした塩味、コショーの香り。なんて贅沢…

1_フライパンを熱して、中弱火の火加減にし、ソーセージを並べる。
2_蓋をして待つこと約5分。焼面はうっすら焦げ色がついたら、裏返します。
3_また蓋をして待つこと約5分。フライパンには脂がにじみ、両面きれいな焦げ目が付きました!

じっくり蒸し焼き方式だと、火入れが足りないということにはなりにくそうです。それでも不安な人は、沸騰したお湯につけてボイル(もしくはポトフなどの煮込み)がオススメだそうです!寒くなったら、ポトフも作ってみようと思っています。

 

(記事作成:NPO法人 いなかみ)

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