産前・産後の母親を支え、赤ちゃんのお世話や家事をサポートする「ドゥーラ」というお仕事を皆さんはご存知ですか?

「ドゥーラ」という言葉の語源はギリシャ語で、「他の女性を支援する経験豊かな女性」を意味します。「ドゥーラ」は産前・産後の母親に寄り添い、優しさと愛情を持って、出産した母親とお子さんに対して家事や育児のサポートを行う専門資格を持った方です。ドゥーラのお仕事をされている方が、高知県全体でも二人しかいません(2024年時点)が、そのうちのお一人が、香美市にいらっしゃいます。

 

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辻井 幸(つじい ゆき)さん 神奈川県出身。大学生の時、お父様が病に倒れ、その影響で大学卒業後、看護学校に入学し学ぶ。看護師として、県立病院や障害者デイサービスで勤務をし、第一子出産を機に退職。慣れない初めてのワンオペ育児で無理をする。無理を重ねられた結果、朝起き上がれないほど腰を痛める。心身ともに疲れ果てられるという経験もあり、のちに「ドゥーラ」の存在を知り、興味を持ち資格を取得。現在は、高知市長浜にあるアニタ助産院に勤めながら、香美市や近隣市町村で出産した母親と赤ちゃん、その上のお子さんたちに寄り添う「ドゥーラ」として活動中。

被災と移住

辻井さんは、お子さんが1歳になった頃、横浜のベットタウンに住んでいて、そこで東日本大震災に遭遇されたとのこと。インフラがダメージを受け、情報が錯綜する状況下での育児の大変さを痛感。何を信じていいのか悩むことも多かったとか。毎日の食品や水、ガソリンが不足し、「生き方を変えないといけない」と感じたという。「これから先、どんなところで子育てがしたいか。」2年間ご夫婦で何度も話し合ったそうです。「これからは、もっと自然に近いところでたくましく生きていき、子育てをしていきたい!」と決意し、四国に移住。紆余曲折を経て、高知県香美市にたどりつきます。

香美市には、お子さんとアンパンマンミュージアムに遊びに来られていて、そこで少し香美市を知り興味を持たれたそう。その後吉野お試し住宅を利用され、利用中に現在のお住まいを見つけ香美市へ移住。辻井さんは「香美市は周囲も移住者が多いし、何よりも地域の方が声をかけてくれて、子育てしやすい地域。」だと感じられたという。

【外部リンク】香美市ホームページ

https://www.city.kami.lg.jp/soshiki/11-2/otameshi.html

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産前・産後の母親に寄り添う仕事

「ドゥーラ」になったきっかけは、産後のお母さんの大変さにショックを受けたことだという辻井さん。それとご自身が経験された、たった一人でする育児の大変さだったという。

ご自身が助産院で出産されたこともあり、助産師の仕事に憧れもあったそうです。しかし、ご自身の年齢や、小さな子ども二人を育てながらという忙しさから助産師を断念される。そんな中、友人から「ドゥーラ」の存在を教えてもらいその道に進んだそう。

「産後ドゥーラ」とは、ドゥーラ協会の認定をうけた有資格者が、産前・産後の母親に寄り添い、家事や育児など日常生活のサポートを担う専門家。資格取得には75時間の講座の受講が必要で、乳幼児の保育実習、産後の食事と調理実習、救命救急実習などを受講します。その後、筆記試験、面談を受け「産後ドゥーラ」の認定となります。

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辻井さんが受講された頃はコロナ禍で、オンラインでの受講や実技も難しかったとのこと。認定され、ドゥーラの仕事を始めた時もまだコロナ禍。そんな中、サポートに入ったお母さんが、今でも心に残っていると言います。帝王切開をし、3日で退院してすぐ赤ちゃんのお世話が始まったお母さん。体の疲労と心の疲労で、疲れ果てたお母さんの様子を話してくださいました。

もっと多くのお母さんに知ってもらいたい

「ドゥーラ」の認知度は低いです。まだまだ一人で出産・育児を頑張っていられるお母さんが多いですし、それが一般的だと思われています。第二子、第三子となると上のお子さんのサポートも必要となり、産後直後の母親だけでは心身ともに疲弊してしまいます。

筆者自身、三人の子供を出産しました。今思い出しても妊娠・出産・育児と結果一人で頑張っていたような気がします。

第一子の時は全てが初めてで、産院を退院したくありませんでした。入院中は赤ちゃんのことだけを見ていればよく、わからないことや困ったことがあれば昼夜問わず助産師さんがサポートしてくれます。第二子は第一子出産から9年後のことです。ほぼ「出産とは」を忘れた状態で、出産・赤ちゃんのお世話と上の子の育児、通常の家事で毎日寝不足でした。心身ともに疲労状態でしたがなんとかやり過ごしていました。第三子の時はコロナ禍で、上の子供たちが家にいる時間が多く、赤ちゃんのお世話と上の子たちの食事作り、片付け、お世話を起きている間中繰り返していたような気がします。

当時いつも思っていたのは、「自分がもう一人欲しい!」です。毎回、産後直後は圧倒的に人手不足でした。「ドゥーラ」の存在さえ知らなかったので、考える余地もなく、ただひたすら作業をこなすしかなかったです。

辻井さんは「今後は産前・産後サポートが、分け隔てなく当たり前に受けてもられるようになりたい。ドゥーラは産後呼ばれることも多いが、産前から準備できることも多いです。妊娠中から一緒に準備や関わりができたらいいな。」と笑顔でおっしゃっていられました。

本当にその通りで、出産前も出産後も、お母さんには相談できて、さらにお手伝いをしてくれる人手が必要です。「ドゥーラ」の存在を多くの人に知ってもらい、育児や家事を一人で抱え込むお母さんが少なくなっていくよう願います。

 

記事作成:NPO法人いなかみ

 

 

 

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