桜の名所としても有名な香美市土佐山田町の「八王子宮」。

土佐山田の町を護る氏神様として人々に愛されてきたお宮さんで、今年は鎮座550年を迎えております。

八王子宮拝殿

八王子宮由緒によると、今から550年前の文明元年(1469)、戦国土佐七人衆の一人であった楠目城主山田氏がその所領三千貫(注1)の山田郷鎮護のため、家臣の野口総左衛門寄長を近江の国(滋賀県)東坂本に遣わして日吉大社の神様を勧進し、旧明治村の八王子の地(現:楠目小学校の南西あたり)に鎮め祭ったのが八王子宮の起こりであるとのこと。

その後、江戸時代に入り、野中兼山が香長地区の原野開発のため山田堰より水を引く際、中井川が神社の敷地にかかることとなり、寛永17年(1640)9月17日現在の地に移転遷座しています。

この時の様子を書籍「八王子宮」には次のように記されています。

「鍋山の南端西部を切り取り、大石を以て、野面積(のずら)といって、鉄杭を全然加えず、原始的の工法を以て、極めて堅固な石垣を築いて境内を固め、これに規模宏壮の社殿を構築し、広い社地長い参道も用意した。
是等の工事施設は、藩の威力経済力はもとより、儒学を究め神道に重きを置く南学者、野中兼山の手腕力量によるもので、今更にその徳が偲ばれるのである。」

当時の土佐のお殿様は第2代藩主山内忠義公。
ここは歴代の山内藩公からも崇拝され、大祭には藩公の名代の参拝もあり、山内家紋所「三つ葉柏」の使用を許されていました。

注1:貫は当時の土地制度の単位、貫高を石高に換算すると一般的には1貫=2石。

八王子宮拝殿内部

境内には、いくつかの建物がありますが、代表的なものをいくつかご紹介したいと思います。

本殿[文化5年(1808)再建]、幣殿(舞殿)・拝殿[文化14年(1817)再建]

この三殿は何れも春日造り。特に幣殿・拝殿の軒は厚く突出し、曲線と直線が織りなす建築美はすばらしく、200年前の設計者、宮大工の技術と当時の信仰、寄進力の強さが伺えます。

本殿には山内家紋所「三つ葉柏」と53の桐の透かし彫りを見ることができます。

天満宮

祭神 菅原道真公命
学問・厄除けなどの神様です。

八坂神社

祭神 応神天皇 神功皇后
病気平癒・良縁成就などの神様です。

松尾富功祿翁頒徳碑

明治〜昭和初期に活躍した香美市出身の政治家で、第二の野中兼山とも言われています。

代表的な偉業としては、香我美橋を架橋、甫喜ヶ峰疎水を引用して鏡野川を通し100hrの荒地を美田に変え、土讃線の計画路線を変更させ土佐山田駅・後免駅を誘致などが上げられます。

他にも、戦没者慰霊碑や各氏の先祖宮が祀られている社があります。

八王子宮輪抜けさま

年中祭儀は元旦から大晦日まで大小22もの祭りがあります。

ここではその一部をご紹介いたします。

夏越祭(輪抜け様、毎年6月30日)

正式には「夏越(なごし)の祓(はらい)」と言い、古くより今年半年間の穢れを祓い清め、夏の暑さによる病気や疲れに逢わない様に祈願する行事です。

参拝客は緑の茅(ちがや)の輪を左、右、左と「8」の字を描いてくぐり、無病息災を祈ります。
さらに、ここには交通安全を願って車ごと輪抜けができる輪があります。

八王子の輪抜け様は、神主さんが丁寧に作法を教えてくれますので安心です。

夏祭(毎年7月24日〜25日)

町内に無数の提灯がともされ、浴衣姿の老若男女が集う夏祭り。

今年は特に10年ぶりに公開された秘蔵物「台提灯(通称:手長足長絵馬台)」が話題になりました。
これは幕末期に地元の青年が奉納したもので、町内の宮大工が制作したと伝わっています。

幅10m、奥行き2.25m、高さ5m(3.3m?)の御殿仕様で、正面上部は唐破風、左右両端は切妻造り。
支柱は長さ2.2m、中央左右は「手長・足長」、左右両端は「昇り龍・下り龍」のどれも一本木彫りで、見応え抜群の彫刻が施され、その正面には2枚1双で絵金と小龍の芝居絵屏風5双を掲げるようになっています。

全部が木作りで解体・復元は自在なのですが、残念ながら老朽化のため今後の公開は未定です。

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秋季大祭(毎年11月6日〜7日)

11月6日午前10時、神社庁よりの献幣使・宮付神職・助勤の神職等約10名の神職によって、雅楽の「邦楽の裡(り)」が営まれ、「浦安の舞」の奉納が行われます。

そして午後1時、御神幸出立の祭儀の後、御神輿は古式による行列(おなばれ)によって、町の西端栄町の旅宮に渡御。
おなばれには甲冑姿の武者、てんぐ、獅子舞などが列を連ねます。
到着後、祭儀を経て元の行列によって町の東端百石町まで渡御、折返し本宮に遷御。
御神体を本殿に移し奉り、神饌を供えて祭儀を営み、本殿の扉をとざしてこの日の祭典は終了となります。

境内の相撲場では奉納相撲大会が開かれ、模擬店も多数出店。たくさんの笑顔に包まれたにぎやかな秋の日になります。

八王子宮 鎮座550年記念行事「餅投げ」

今年は特別に鎮座550年を記念して本殿で神事等の行事を行うほか、境内にて餅投げ(4,000個)を行います。

お気軽にご参加ください。

日程:令和元年9月29日(日)14:30〜

八王子宮宵宮

ここは香美市指定文化財(史跡・建造物・工芸品・絵画)が多数指定されているところでもあります。

また、今年は地元の漫画家、森田将文さんが干支のイノシシを画いた大きな絵馬もあり、見どころいっぱい。

西隣には香美市立美術館や香美市社協の地域サロン「てとて」もあり、散歩にもオススメです。

祭りに限らず、いつでもお気軽にお出かけくださいませ。

NPOいなかみ

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