香美市に関わる魅力的な人を紹介する連載記事として「かみめぐり~香美を廻る体験博~」の各プログラムを主催する10人にインタビューを行いました。
第5回は、『ゆず畑で焚き火ビジエ』を企画されました物部ゆず三戸農園園主の三戸毅さんにお話を伺いました。(コロナのため中止となりました)
物部の青果ユズ
高知県は柚子の生産量が全国で1位の県です。柚子には2つの種類があります。それは果汁を搾汁し加工品として使用される『酢玉(すだま)』と果実をそのまま出荷する『青果ユズ』です。
高知県産の柚子は、多くが「酢玉」として栽培されるものが多いのですが、香美市物部町で生産される柚子の多くは「青果ユズ」として出荷されています。「青果ユズ」は、傷や日焼け跡の無い玉の美しさと棚持ちの良さが特徴で、全国各地の旅館や料亭からの需要が高いそうです。味だけではなく、外見の美しさも求められるため、きめ細やかな栽培管理や品質の安定が欠かせません。
現在、「物部ゆず」の生産者は約170人、出荷量は約807トン(令和2年)で青果ユズの生産量は日本一を誇っています。(参考:JA高知『県内初物部ゆずGI登録』より)
今回インタビューをさせていただいた三戸さんは、4年前まで大阪でサラリーマンとして働いていました。
現在は高知に移住し、現在は物部町で柚子農家としてお仕事をされています。また、柚子の栽培以外にも物部の柚子農家が直面する後継者問題に向き合うために、「物部ゆず」への就農サポートや移住促進に繋がる活動へ参画、柚子の魅力を広める取組み等にも注力されているそうです。
自分の生き方とは
サラリーマン時代は、営業職として生き残っていくために、社会や組織に疑問を感じても何も言わず従うばかりの日々。
周りから要求されることと、自分が思っていることのギャップが日に日に大きくなっていったそうです。その際、個を抑え社会の枠にあてはまっていた自分に疑問を感じていたと言います。
「早くこの世界から飛び出し、自分を開放してあげたい」という自分の気持ちに正直に行動をしたことが、人生を大きく方向転換するきっかけになったと振り返ってくれました。
(関連記事▶︎いなかみだよりNo.39 香美市の移住者インタビュー http://inakami.net/immigrant/inakamiletters39-24919.html)
決して、田舎暮らしに憧れてという想いから移住を決意したわけではなく、個人として自立して生きていくこと、また心の豊かさを優先する生活の実現を目指してたどり着いたのが、高知県で行う柚子の栽培でした。1つの商品に専念し、とことん追求したいと専業農家が実現できる「物部ゆず」を選ばれました。
モットーは自分らしく
今思えば簡単なことだったのかもしれないと三戸さん。必要だったことは『鎧や衣装で着飾り、異なる自分を演じていた自分』を捨てること。
「自分が心地良いと思える方向に進み、自分に合った道を選択するのに遅いも早いもないのではないかと思います。思いきった選択ではあったけれど、今は香美市に来て本当に良かったと思います。自由になれ、脱皮できた気分です。そして併せて感じているのが、物部の人の温かさ。着飾ったところがなく、県外から来た私に対しても気さくに接してくれて本当に優しい。そんな風に付き合える人が、今考えると自分が生きてきた社会ではいなかったのかもしれません」と三戸さん。
自分より“人のため”を優先する。三戸さんはご自身の周囲の方を知れば知るほど、人間的な魅力を感じているそうです。
「自分の気持ちに素直になることで、裸の自分で人と向き合えるようになりました。着飾り演じて生きる自分を捨てることで、相手も向き合ってくれるようになり、本物を感じるようになったように思います。本当の意味で人間本来の喜びに敏感になれているように感じます。自分らしくいることがこんなにも大切なことだったとは。」と優しい表情で語ってくれました。
自分にしかできないことで恩返し
もともとは、自分のために移住を決意し農家になった三戸さんですが、今は誰かのために、そして物部のために力になりたいという気持ちが強くなったといいます。
「昔の自分のように”今”に迷っている人に対して、経験したからこそ話せることや田舎で生きていくことの良さを伝えていきたい」と三戸さん。
「自分の気持ちに耳を傾ける勇気を持ったことで、心の豊かさを実現できている今の自分がいます。それが叶ったのも物部や柚子のおかげだと思っています。自分を大事にできたことで、本当の意味で“誰かのために”を考えて行動できる自分がいる。だから将来を変えたいと思う人が、私の存在を知ることによって、こんな人生もあるのだということを知ってくれる機会になればいいと思います。
高知に来たいと言ってくれる人のために移住者が気持ちよく過ごせる環境を整えていくことも私の使命だと思っています。自分の行動がいつか、物部という場所で柚子農家をしたいという人を増やすことに繋がってくれたら、それはとても幸せなことですね。」
“自分らしく”を求めて決意した高知への移住。
やりがいのある仕事や温かい人に出会い、今度は人のために力になりたいと語ってくれた三戸さん。
そして、三戸さんが大切にされている”物部ゆず”というブランドがこれからもあり続けていくために、自分がすべきことは他にもたくさんあると話してくれました。
三戸さんのように、自分に合った道を選択する方が一人でも多くありますように。
今回のインタビューを終えて、自分らしくいることの大切さ、そして地域の特産品「物部ゆず」を守るために、微力ながら私にもできることがないか考えていこうと思いました。
———————————-
物部ゆず三戸農園
電話番号:090-8234-4457
(三戸農園では、ゆず収穫時(11月頃)には収穫のお手伝いを募集しているので、ご興味のある方は是非連絡してみてください。)
【関連記事】いなかみライフ いなかみだよりNo.39「香美市の移住者インタビュー」http://inakami.net/immigrant/inakamiletters39-24919.html
【外部リンク】かみめぐり ゆず畑で焚火ビジエ
https://kamimeguri.com/programs/616e19c0421aa90001bd19a5