「物部ブラウン」と揶揄される香美市の一級河川

香美市には「物部川」という一級河川が流れています。高知県は清流・四万十川や「仁淀ブルー」と呼ばれる仁淀川など、美しい川がたくさんありますが、物部川は「物部ブラウン」と揶揄されるほど、茶色く濁った日が多い残念な川であります。ただ、残念な川ではあるのですが、四万十川や仁淀川ではおそらく生まれることは無いであろう、人と川の物語が生まれつつあります。

「物部川を鮎の沸き立つ昔の川に戻したい」

その想いは、川と直接関係する人だけで無く、林業、農業、漁業、市町村、大学、市民団体と、業種を超えて広がってゆき、皆で集まってやるべきことを考え、それを実行に移しています。そんな物部川の現状や今後の展望などを伝えるシンポジウムが、11月30日(土)に高知工科大学(以下、工科大)で開催されることになりました。

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■第2回物部川を考えるシンポジウム(11月30日)

http://inakami.net/event/monobegawa-822.html

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そのシンポジウムに工科大の大学生として関わっている川真田くんから、準備として動いてきたことを聞かせてもらう機会を得ましたので、対談形式でご紹介させていただきます。

川真田くん3
高知工科大学生の川真田くん

(いなかみ)
さっそくだけど、川真田くんは今回のシンポジウムでどんな役割を?

(川真田)
僕は今回、物部川に関わる人にインタビューを行い、その現状をシンポジウムの劇に活かすという役割を担っています。

(いなかみ)
へぇ。話だけではなく劇にするっていいね。インタビューはどんな人にしてきたの?

(川真田)
海の漁業、山の林業、里の農業、の3業種の方に話しを聞いてきました。

 (いなかみ)
山から海まで、川を中心に関連する主要な業種の人達に話を聞いてきたがやね。それぞれの想いがあって面白そう。具体的にどんな話を?

山には希望があるけど、海には希望がなかった

(川真田)
まず海の漁業関係者に話を聞いたんですが、なんていうか、、希望が全然無かったんです。

 (いなかみ)
え?希望が無い?それはどういうこと?

(川真田)
本当に漁業には未来がないと感じているようでした。やはり物部川の濁水が海にも影響しているのかと思い聞いてみましたが、確かに一気に来ると影響はあるが、そうでなければそこまで大きな影響は感じられないとのお返事でした。では何が問題かというと、潮の流れやプランクトンの減少といった、海そのものに変化が起こっていて、捕れる魚の量が減ってしまったこと、さらには量が減るだけでなく、魚の価値も下落し安価でしか売れなくなってしまったこと。だからどうしようもない、というお話でした。

今、ここで漁師をしている人達も、半農でなんとか生活している現状で、とてもじゃないけど若い人には漁師を勧められない。全く希望が無い。悲しいですがそんな感じでした。

(いなかみ)
そこまで厳しい状況にあるとは…。川の話は、その源流である山の問題ばかりクローズアップされるけど、流れ着く海にも目を向けないといけないと実感させられるね。

川真田くん1

(川真田)
はい。川からの濁水の影響はあまり感じないということでしたが、川から流れてくるバーベキューのゴミ等が、網にかかってたくさんとれることはよくあるそうです。

(いなかみ)
それはまたイヤな現実…。そんな海に対して山はどうだった?

(川真田)
はい。山も森林の荒廃や鹿の食害といった話を聞いていたので、暗い話を聞くことになるのかなと思っていたんですが、予想に反してとても明るかったんです。

(いなかみ)
明るかった。それは確かに意外やね。

(川真田)
森林組合を訪問したのですが、若い人が多くて活気にあふれていました。物部川の課題は山にあると認識されており、課題解決には山の再生が不可欠だとおっしゃっていました。自然林が減って人工林になったことで水をつくる力が弱くなった。人工林は保水力に優れていないので放っておけばどんどん悪化する。しっかり管理しなければと。

(いなかみ)
なるほど。課題とその原因が明確になっているから、やるべきことが見えてるんやね。

(川真田)
はい。ただ、昔は林業に携わる人が大勢いたので管理できたけど、今の人数では無理があるという現実もありました。ただ、そこは新しい仕組みを若い人達に考えてもらいたいと。事務所に若い人が多いように、今の若い人は山に対する価値観が変わってきていると実感しており、それはとても嬉しいことだと話してくれました。

山は想像以上に希望にあふれていたので、この現状はもっと若い人に知ってほしい、そうすればより良くなるのではと感じました。

(いなかみ)
若い人が山を変えるってとてもいい話だと思う。シンポジウムもそんな若い人達に現状を知ってもらう良い機会になりそうやね。じゃあ最後の農業も聞いていい?

(川真田)
農家の人は完全無農薬に取り組んでいる方だったこともあって、川の汚れは生活排水からの影響が大きいという話をしてくれました。昔は洗剤を使っていなかったから水も綺麗だったけど、洗剤を使うようになってから魚もホタルも減ってしまったと。ただ、だから昔に戻れというのではなくて、自然を見つめて、自然のありがたさを体験することで、生活も見直してほしいと考えている、ということでした。

(いなかみ)
自然をベースに生活するって川と向き合うには必須の考えかもしれんね。

(川真田)
今は自然との関わりがなくて、関わる必要もないからそういうきっかけづくりが必要だと感じました。

(いなかみ)
そのきっかけがシンポジウムの劇!

(川真田)
はい。今回聞かせていただいた危機的な状況にある漁業や、未来のために新しい仕組みを求めている林業、そして自然を大切にする農業や暮らし方といった話を劇に取り入れることを提案して、11月30日に披露したいと思います。

(いなかみ)
うん。これは本当に楽しみ。とっても期待してます。
今日はありがとう。

(川真田)
こちらこそありがとうございました。

川真田くん2

<川真田くん>
川真田くんは高知工科大学のシステム工学群に所属する三回生。将来は工業高校の教師を目指しており、直接関係する活動では無いけど、こうした地域の現状を生徒に伝えていくことが自分の役割だと思って取り組んでいるとのことでした。環境のことを伝えられる教師になって、子ども達にも環境に対して行動できる人になってもらいたい、という想いが溢れ出ていました。

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