昨年、東大合格を目指すAI「東ロボくん」の開発リーダーで、国立情報学研究所教授の新井紀子氏が講演会で「教科書がきちんと読めていない生徒が多く、学力と読解力が深く関連している」と言われておりました。
調べてみると、新井氏は著書で次のようにまとめられています。

全国25,000人を対象に実施した読解力調査(抜粋)

  • 中学を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない。
  • 学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない。
  • 進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度である。
  • 読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関はない。

高校生の半数以上が、教科書の記述の意味が理解できていないというのです。

新井氏はその原因は判明していないと記しています。
また、上記の読書に関わる項目は自己申告なので、実際の行動との関係は不明であるとしています。

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基礎読解力の実態について、「これは昔からこの状態が当たり前で、最近判明した」ということでしょうか。
そうではないと思います。

そこには時代とともにツールの変化があります。

ファクシミリが普及した1970年代以前、企業の大切な指示命令はすべて文書が基本でした。
正確に伝わる文書を書けること、その文書を正確に読み解くことができなければ企業は動くことができません。
今でも鉄道会社などは、各駅への指示が正確に伝わらないと事故に直結することから、文章作成に関して厳しいものがあります。

文章の指示だと、以前は郵送で到着まで時間がかかり、訂正もままならないことから、作成も真剣そのもの。
それがファクシミリからEメール、SNSの時代になり、チャットなどは会話するように文字でやり取りができるようになりました。

子どもたちを取り巻く環境も同じ。
一昔前まで疑問があったら本で調べるか、知ってそうな人を探してとことん聞くか、それでも分からなければ空想を広げて考えていました。
今はほとんどの答えを一発で、パソコンやスマホから瞬時に得ることができます。

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もちろん、ネット環境にもいいことがたくさんあると思います。
でも、根本的に脳の使い方が変わってきています。

脳科学に詳しい東京大学大学院教授・酒井邦嘉氏は次のように述べています。

『文字のように情報量が少なければ、足らない部分を想像力で補う必要が生じてきます。
想像力で補われる情報量は多い方から「文字・音声・映像」の順番です。
ここでいう想像力とは、「自分の言葉で考える」ことです。分からない所が多いほど、脳は音韻・単語・文法・読解の4つの領域を総動員して「これはどういう意味だろう」と考え始めます。』

見たり聴いたりするものが即座に消え去ってしまう映像や音声に対して、文字の大きく違う部分がまさにここです。

活字を読むことは、単に視覚的に脳にそれを入力するだけでなく、能動的に足りない情報を想像力で補い、曖昧な部分を解決しながら「自分の言葉」に置き換えるプロセスなのです。

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読書の効能は様々言われていますが、この「想像力を育む」ということは子どもにとってとても大切なことではないでしょうか。

そのために、有効な方法の一つに「読み聞かせ」があります。

「読み聞かせ」とは、その字のとおり「読み手が本や絵本を子どもたちに読んで聞かせること」。
これには、想像力以外にも、集中力・言語教育・自己肯定感・精神安定などたくさんの効果が報告されています。

聞いている子どもたちには、目に見える行動も現れます。例えば、昔話の読み聞かせ。

  • お話なんてと馬鹿にして、後ろ向きに座っていた子が、いつのまにか前向きになっていた。
  • いちばん集中して聞いてくれた子どもが、実は授業をまともに聞いてくれたことがない問題児だった。

ということがあるそうです。昔話には不思議な力があるのでしょうか。

そして、子どもたちが本に興味を持ってくれたら、いつでも本を与えてあげてください。

本は最初から最後まで、すべてを読まなくても大丈夫。
いろんな本を読むことで、感覚や物を見る眼が広く深く養われていくのです。

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有名な人で本や新聞を読んでいない人に、私は出会ったことがありません。
今の時代だからこそ、子どもたちにはいつでも本が手に取れる環境を作ってあげたいと思います。

香美市では各町に図書館があります。
また、当センターには香美市立図書館の協力をいただき「おでかけ図書館」を設置しております。
お気軽にご利用ください。

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なお、読み聞かせを効果的に行うテクニックを教えてもらえる講座があります。
興味を持っていただける方は是非ご参加くださいませ。

読書ボランティア養成講座

日時:2019年9月22日(日)13:30〜15:30
場所:香美市基幹集落センター(香美市役所香北支所の隣)
募集人員:30名
参加費:無料
※本講座は、芸西村、高知市、いの町、土佐清水市、四万十市でも開催されます。
問い合わせ・申し込み先:認定NPO法人 高知こども図書館
088-820-8250

参考文献
書籍:
「AI vs 教科書が読めない子どもたち」著者:新井紀子
「子どもと本」著者:松岡享子
URL:
「脳は紙の本でこそ鍛えられる」致知出版社
https://www.chichi.co.jp/web/20180810chichi_contents2/
「絵本の読み聞かせ効能・効果」まいとプロジェクト
https://www.might-project.com/child-care/book-select/003/index.html

NPOいなかみ

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