東日本大震災後、安心安全な環境を求め、家族で香美市に移住して来た島津佐知子さん。被災地近辺の親子が自然の中でリラックスして楽しめるような保養を目的に「高知・のびのび青空キャンプin香美」を開催するなど、社会活動にも積極的。一度も下見をせずに高知にやってきたという、そんな驚きの彼女に迫ります。

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移住のきっかけは東日本大震災

いなかみ
最初の質問ですが、いま香美市のどちらにお住まいですか?

島津さん
約2年前、植木職人の夫と子ども二人(当時5歳と3歳)で、横浜から香北町谷相地区に移住してきました。標高450mの見晴らしの良い山の上にある地区で、世帯全体の1/4ほどが移住者です。豊かな自然環境や文化に惹かれてか、職人や芸術家の方々が多く移住されています。

いなかみ
谷相地区はかなり個性的な方々が集まっていて、ある意味有名ですよね。
それじゃ、なぜ移住しようと思われたんですか?

島津さん
やはり東日本大震災が大きなきっかけでしたね。震災後、西日本方面への移住を検討するようになりました。都会の生活に疑問を感じるようにもなっていましたし、自然に囲まれた環境の中で子どもを育てたいという思いも強くなっていたので、そのタイミングで思い切りました。

子どもの教育環境が良い香美市

いなかみ
なるほど。香美市以外にも候補があったかと思うのですが、その中でもなぜ香美市を選ばれたんですか?

島津さん
他にも候補はありましたが、友人が既に香美市に移住していたこと、空港が近くて関東圏へのアクセスが便利だということが大きかったですね。それと、子どもの教育環境を重視しました。小学校や保育園の子どもの数が、過疎地としては比較的多かったんですよ。子どもには友達がたくさんいる環境で育ってほしいと思っていましたから。

いなかみ
小さなお子さんのいらっしゃるお母さんならではの視点ですね。事前の情報収集はどうなさいました? 下見とかどんな感じでされましたか?

島津さん
実は、私自身は下見してないんですよ(笑) 情報収集はインターネットだけ。でも、主人はちゃんと来ましたよ!・・・一度だけですけど(笑) ビデオカメラで景色や町の様子を撮影したものを、後で見せてもらいました。私たちはかなり特殊なので、他の方には参考にならないかもしれません(笑)そうは言ってもいきなり谷相地区は不安だったので、三ヶ月間、高知市でお試し居住してみましたけどね。

下見無しで移住したと笑う島津さん
下見無しで移住したと笑う島津さん

いなかみ
すごい! なんという勇敢な・・・(笑) じゃあ、仕事や収入の面ではどうですか? 不安はありませんでした?

島津さん
食べるものは自分たちで育てるような暮らしが理想なので、いわゆる自給自足に挑戦していますが、なかなか自給率を上げるのは難しいですね。でも失敗しても大丈夫。ご近所の方が新鮮野菜をお裾分けしてくださるので、とっても助かっています。
夫は自営で植木職人、私は香美市の喫茶店で週3回のアルバイトをしていますが、収入を上げていくのは今後の課題ですね。ただ、都会に比べると家賃なども圧倒的に安いですし、支出自体が下がっているので、何とかなっています。ちなみに、家賃は1万5千円です。

薪風呂にカルチャーショック!

いなかみ
おぉ~さすがに安い!お住まいはどのようにして見つけたんですか? 空き家バンクですか?

島津さん
いえ、友人からの紹介です。築130年くらいの古民家なんですけど、最初はカルチャーショックを受けましたね・・・薪風呂に(笑) 都会に住んでいた頃はもちろんボタンひとつでしたから。でもさすがにもう慣れて、薪割りもかなり上達しましたよ(笑)谷相地区は薪風呂のお宅が多いので、夕方には周囲に薪のいい香りが立ち込めるんですが、これがとても心地よいんですよ。

小児医療に不安はあるも理想の暮らしをほぼ実現

いなかみ
お話を伺っていると、すごく充実した生活を送られているように感じるのですが、そんな中で不満に思っていることとか、そのあたりはいかがですか?

島津さん
うーん・・・香美市に小児科がないっていうことですかね。隣の南国市まで行かないといけないんです。そこは親としてちょっと心配なところではありますね。

いなかみ
なるほど。医療関係の不安や不満については、移住者の方を対象にアンケートをすると必ず上位に来てしまいますね。今後の対策が急務だと思います。そのような現状の中で、全体的な満足度としてはいかがですか?

島津さん
理想の暮らしはほぼ実現できていると思っていますよ! 食べ物も美味しいし、お金では買えない豊かさもあります。春には筍を掘ったり、野うさぎの赤ちゃんと遊んだり、夏には沢蟹が道路を横切り、自宅前の棚田には蛍が飛び交います。私は虫が苦手ですが「蜘蛛の子散らす」瞬間も見ました!そうそう先日は立派な牡鹿に出会いましたよ。移りゆく季節(四季)を子どもと一緒に体感できる、これこそが私の求めていた田舎暮らしです。そして何よりも、子どもがすぐ環境に馴染めたことが大きかったです。移住して数ヶ月で土佐弁を喋るようになって、正直驚きました(笑)

いなかみ
子どもの適応能力はさすがですね。最後に、「こんな方が移住して来てくれたら嬉しい」というのはありますか?

島津さん
一緒に暮らしを楽しめる人がいいかな。人口3万弱の香美市では人と人との距離が近い気がします。それを煩わしいと思わずに、メリットとして捉え一緒に楽しめたら最高ですね。私自身香美市にきて本当に良かったと思っているので、それを多くの方に知って欲しいです。また子どもたちにとってはここが故郷になるわけですから、この豊かな自然を(次世代へ)残してあげたいですね。

いなかみ
移住者が増えて一緒に楽しんで、豊かな自然を残していく。そんな流れをつくっていきたいですね。今日は本当にありがとうございました。

島津さん
こちらこそありがとうございました。


谷相地区

旧香北町の中心地である美良布(アンパンマンミュージアム付近)から北上して物部川を渡り、日ノ御子からさらに山をのぼったところにある集落。自然豊かな土地はもちろん、太平洋を望むこともできる地域で、作家やアーティスト、有機農家など、多くの移住者が集まってきている。


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