香美市にまつわる有名人に必ず入ってくる「吉井勇」という人物。香北町猪野々に一時期暮らしていた方なのですが、どれだけすごい人なん?って方も多いかも…
ちょっとご案内をさせていただきたいと思います。
時は1886年(明治19年)東京の伯爵の家に生まれた吉井勇。15歳の頃には雑誌に短歌を投稿して1位となるなど、文学の頭角を現しています。
現早稲田大学を中退後は本格的に文学の道に進み、交友関係には石川啄木、平野万里、北原白秋、斎藤茂吉などなど、有名人がずらり。その中で続々と戯曲を発表して脚本家としても名をあげ、歌集『酒ほがひ』、戯曲集『午後三時』で耽美派の歌人・劇作家としての地位を築いています。
日本中に名がとどろいたのは、なんと言っても1915年(大正4年)発表「ゴンドラの歌」の作詞者であったこと。これは芸術座公演『その前夜』の劇中歌として生まれ、大正時代の日本で大流行。この曲は平成の世になっても、たくさんの有名な歌手がリバイバル曲として発表し、YouTube(ユーチューブ)でもご覧いただけます。
勇は1931年(昭和6年)初めて土佐に来られ、1933年(昭和8年)から3年間、香北町猪野々で生活をしています。実はここに来る前にある事件に巻き込まれ、人生消沈の時。勇は猪野々で過ごした日々について「私は一種の人間修業をすることができて、不遇時代のさすらいの身から再び起ち上がることができたのです」と振り返っています。
たった3年間ですが、その後の勇は見事に復活し、京都で活躍することになります。
♪ ゴンドラの唄 ♪
いのち短し 恋せよ少女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日の ないものを
いのち短し 恋せよ少女
いざ手をとりて 彼の舟に
いざ燃ゆる頬を 君が頬に
ここには誰れも 来ぬものを
いのち短し 恋せよ少女
波に漂う 舟の様に
君が柔手を 我が肩に
ここには人目も 無いものを
いのち短し 恋せよ少女
黒髪の色 褪せぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬものを
名作「ゴンドラの歌」の7音で表現された歌詞には、現代でも色褪せぬすばらしい日本語の世界が広がっています。
今年、吉井勇記念館は開館15周年を迎えます。香北にお出かけの際には、勇の世界を覗いてみてください。
なお、なぜ猪野々にやってきたのか、勇がそこで何を感じ、考えたのかを解説する講座があります。是非、この機会もご利用ください。
香北文学講座「吉井勇と猪野々」
日時:2018年1月22日(月)10:00~11:30
場所:香美市立図書館香北分館
参加費:無料(事前申し込み要)
(香美市立図書館香北分館)
(吉井勇記念館)