「この子は大丈夫だろうか」から始まった日々
「本当に、この子はみんなと一緒に過ごしていけるのだろうか」――保育園に入園したあの日のことを、今でもはっきりと覚えています。周りのお友達が元気に歩き回る中で、わが子・ハル君はまだハイハイをしていました。発語も本当に少なく、自分の気持ちをうまく伝えることができない。この先どんなふうに成長していくのか、どんな毎日が待っているのか。期待よりも、不安のほうがずっと大きかった、あの頃でした。

「できるようにする」ではなく、「その子に合った形」を見つけてくれる場所
そんな私たち親子を、香美市の保育の現場はまるごと受け止めてくれました。先生方は言葉だけでなく、表情やしぐさ、ほんの小さな変化からハル君の気持ちをくみ取ろうとしてくれました。「どうしたらできるか」ではなく、「どうしたらこの子らしく関われるか」を一緒に考えてくれる。その関わりがあったからこそ、ハル君は少しずつ安心して過ごせる場所を見つけていったのだと思います。

小さな“できた”の積み重ねが、今につながっている
保育園での生活の中で、ハル君は少しずつ、でも確実に変わっていきました。運動会や発表会では、先生方がたくさんの工夫を重ね、“みんなと一緒に参加できる形”をつくってくださいました。その中で「自分もできる」という気持ちを少しずつ育てていきました。家では、洗濯物を干すのを手伝ってくれたり、周りの人が「いただきます」をすると「どうぞー」と声をかけたりと、小さなやさしさや気づきが増えていきました。言葉はゆっくりでも、人と関わろうとする力が確かに育っていることを感じています。それはきっと、保育園で過ごした何気ない日常の積み重ねがあったからこそだと思います。

卒園式の日に見た、“4年間のすべて”
そして迎えた卒園式。その場に立ち、最後までやりきろうとする姿に胸がいっぱいになりました。そして最後の集合写真のとき、ハル君は迷うことなく大好きな加配の先生のもとへ駆け寄っていきました。言葉では表せなくても、「大好き!」という気持ちが、その行動のすべてに込められていたように思います。あの瞬間、この4年間の時間が確かにここにあったのだと感じました。
卒園しても終わらない、香美市の“つながり”
この春、ハル君は 高知県立山田特別支援学校 へ入学します。放課後は新しく通う 「すきっぷ」、そしてこれまでお世話になってきた 「COMPASS.香美」 の放課後等デイサービスへ。環境は変わっていきますが、「知ってくれている人がいる」「見守ってくれている場所がある」というつながりは続いていきます。この安心感は、子どもにとっても親にとっても、何より大きな支えです。
移住支援の仕事をする中で気づいた、“本当の魅力”
私は現在、NPO法人いなかみ で移住業務に携わっています。これまで多くの方に香美市の自然や暮らしの魅力を伝えてきましたが、自分自身が子育てをする中で、改めて強く感じたことがあります。それは、このまちの魅力は環境の豊かさだけではないということです。人が人を見てくれるまちであること、一人ひとりの違いを受け止め、その子のペースに合わせて関わり続けてくれる人たちがいること。それこそが香美市の良さだと感じています。
発達に不安があっても、成長がゆっくりでも、ここには一緒に悩み、一緒に喜び、長い目で見守ってくれる人たちがいます。振り返ると、育ててもらっていたのはハル君だけではなく、親である私もまた、このまちで支えられながら前を向けるようになっていったのだと思います。

これからも、このまちで
保育園を卒園し、新しい一歩が始まります。それでも、これまでと変わらず、このまちの中で、つながりの中で日々は続いていきます。ハル君の成長はこれからもきっとゆっくりです。それでも、このまちでなら大丈夫。そう思える場所があることが、何よりの安心です。
そして私は、この香美市での暮らしを、これからも伝えていきたいと思います。
▶これまでの記事
・発達障害児のゆっくりな成長を見守っていく vol.1 https://inakami.net/life/hattatu1-30521.html
・vol.2 https://inakami.net/life/hattatu2-31171.html
・vol.3(秋の収穫・お芋掘り編)https://inakami.net/blog/2024-10-13-32156.html
記事作成:NPO法人いなかみ