NPO法人FUSEとNPO法人いなかみの連携企画「個人事業」をテーマにした連載記事、第3回をお届けいたします。

今回は香美市を拠点にホームページの企画から制作を手がけるウェブサイト制作プロダクション「ウェブポップ(Webpop)」のディレクター杉本憲昭さんです。ウェブ制作関係者のコミュニティ勉強会『ウェブクリエイターズ高知』の代表としても活躍しています。

WEBPOP杉本さん

僕の仕事はウェブ制作をしながら、顧客と一緒になってウェブの戦略を考えて作っていく仕事です。うちのこだわりとしては、多分高知県内のウェブ制作者はあまり行っていないようなアプローチの仕方をしているのかなと思います。

デザインはデザイナーに任せており、僕自身はしていません。ホームページというものは作って終わりではありません。作った後にどれだけ「アクセスや問い合わせを増やすか」とか「どれだけ売り上げを伸ばせるか」という方が大事だと思うんです。

なので、そのための様々な提案をし、定期的に企業さんと意見交換をして一緒にホームページを作っていくのが基本なんです。それからホームページは「デザインありき」ではなく、まずしっかりとコンテンツを作った後にデザインを埋めていく、そういうやり方がベストだと思っています。だから、そういう意味で他とは違うやり方をしているのではないでしょうか。

『ウェブクリエイターズ高知』はウェブ屋さんが集まるコミュニティ勉強会で、プログラマー、デザイナー、ディレクター、コーダーが集まります。そこで知り合った人たちと組んで仕事をしたりという可能性を広げていく機会にもなります。かるぽーとで2、30人ぐらい呼んでセミナーを開催しています。

事業の楽しさと課題

新しい流れが必ずしも高知ではまだ受け入れられていないところもあります。だから今も、最初にコンテンツを決める前に「まずデザインを見せてほしい」というところが多いんです。

今まで見ていると、メニューも決まっていないのに、「メニューバーがこのデザインだからこの情報を入れよう」っていう感じです。でも、そういう作り方では何も生まないし、そもそもやり方が違う。それって、見る側からしたら全然役立たないんです。とにかく先にコンテンツをしっかり決めることが大事だとずっと言い続けているのですが、わかってもらうまでが難しいですよね。

作っても動いてないホームページも多いです。更新する暇がないとか、更新できる人がいないというのが主な理由です。

ホームページを運用することで、売り上げや知名度が上がっていくわけですから、ブログを書いてとかちゃんと更新してとか商品が入ったら入れ替えるとかそういうこともしなきゃいけないんですが、その大切さがいまひとつ伝わらない。

積極的な企業さんは、できないところを僕に依頼してくれて、こちらで更新作業をしていますが、 基本はやはり企業側で運営するのが一番だと思うんです。なぜかというと、商品の入れ替えぐらいはただの更新ですので構わないんですけど、ブログなどはその企業さんが自らやらないと意味がないんです。

だからそこだけは行って下さいねと言ってはいますが、やっぱりやっていないところが多いんです。そういうところがなかなか難しいなあと思います。

高知で事業を起こす楽しさはいっぱいありますね。直接、顔を見ながらお客さんとやり取りができるというのは、一緒に作り上げていく楽しみがあるのですごくいいと思いますが、地方ならではの問題は「単価が安い」ことですよね。

ウェブポップWebサイト
ウェブポップWebサイト

ウェブ事業を志す若い人へのアドバイス

ウェブの仕事で事業を起こしたい若者にアドバイスをするとしたら…そうですね、流行は大事ですけど、流行りすたりがあるのでそればっかりやってもしょうがない。それよりも「普遍的なものをちゃんと考えて追い求める」ことが大事じゃないかと思いますね。

それってどういうことかと言うと「媒体は変わっても、デザインのセンスや考え方は変わらない」ということと同じです。ウェブを作る技術は日々進化し続けるし、プログラムのコードや言語もどんどん変わっているんですけど、ユーザーやお客さんに対して、接していくポイントをいかに作るか、どうやって売るか、とかそういう部分はずっと変わらないんです。

HTMLを書けるとかそういった技術のスピードアップに関して頑張るのはすごくいいとは思うんですよ。でも、それって5年後、10年後も使えるかというと、それが存在するかどうかも分からないんです。だから、そういうところをまず、しっかり考えて仕事をしたほうがいいと思いますね。

正直言って今、デザインは関係なくなってきているんじゃないかと思います。やはりコンテンツのパワーと言うかネットで必要な情報をきちんと言うさんに届けられるかというところが最も大きい。Google なんかもその方向です。

ただ単に自分たちの言いたいことを載せるだけでは誰もアクセスしなくなってきているのが現状なんですよね。

WEBPOP杉本さん2
ウェブポップ事務所

三ヶ月で流れが変わるウェブ業界

ウェブ制作に関しては、未来のビジョンは流動的です。業界的に見ると Web 制作というのは厳しいんじゃないでしょうか。誰でも作れるようになってきていますから。ウェブの世界は非常に流動的で流行は3年と言われていますが、実際は1年ぐらい、いやそれでも遅いです。最短で3ヶ月ぐらいで移り変わっているんじゃないかと感じます。

例えば1年前に Iot (モノのインターネット)なんて言葉はほんの一部の人しか知らなかったのに、どんどん技術進歩してメディアに出てきてやっと一般にも知られるようになってきましたよね。VRやAIも同じです。

だから、今後はターゲットとなるお客さんが何を考えているかきちんと把握して、共感して作っていくことが何より大事ですよね。そのことが将来的にインターネットの世界のみならず、あらゆるデバイスで関係してくると思いますので。

そこは未来のビジョンにも繋がるかもしれないですが、僕はウェブを作るのだけが自分の仕事だとは思っていなくて、将来的にはもっとを総合的な、例えばIotで全てのものがネットにつながるという世界になるのであれば、もはやパソコンだけの世界ではないと思っています。

いろんなところからつながって、実際にイベントとかもそうですし、テレビ、雑誌、あらゆるところとつながってくる可能性があるでしょう。ですから、僕自身は、そこのところの「何か」に引っかかるような仕事がしたいなと思っています。

最後に、杉本さん自身は10年後どんな展開をしていると思いますか?

10年てスパンが長いんで、全然わからないですね。仕事は朝から晩までずっと作業していますので、10年後は、僕は50歳ですから今のペースでの仕事は無理かなと思うので、もうちょっとゆっくりしたいなと思いますけど(笑)。

仕事は実際に何をしているかは、まだわからないですね。でも、まあこの仕事を15年ぐらいやっているわけですので、他の仕事はしていないとは思いますけどね(笑)。

言葉の意味をじっくり考えながら話す杉本さん。まだまだ止まったままのHPが少なくない今、コンテンツと運用こそが会社の利益につながるという一貫した想い。そして高知県内でウェブ制作者を盛り上げてパワーを共に高めていこうという志をひしひしと感じました。

【外部リンク】
ウェブポップ http://www.webpop.in
ウェブクリエイターズ高知 http://www.kochiweb.com/

【関連リンク】
移住者の小さな起業を応援するプロジェクト「いなか・ラボ」スタート
http://inakami.net/works/inakalabo-11381.html

提供:NPO法人FUSE
企画運営:NPO法人いなかみ

この記事を書いた人

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【プロフィール】

渡辺瑠海 わたなべるみ
ライター、編集者、エッセイスト

放送業界を経て25歳で出版の世界へ。東京でライターとして雑誌企画、書籍制作に携わった後2003年に高知にUターン。書籍、冊子を手がける。著書『田舎暮らしはつらかった』『龍馬語がゆく〜日常をハイに生きる土佐弁』『イヌキー・私とトートバッグ犬の10年』高知新聞連載『はちきん修行記訪ねて候』など。

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