「高知県香美市で有機農業といえば?」
この問いに真っ先に上がるお名前の一つが「有限会社 大地と自然の恵み」です。
その「(有)大地と自然の恵み」で現在正社員を募集していると聞いたので、求める人物像、社長の小田々智徳(おだた とものり)さんのこれからの若者に期待する思いを伺ってきました。
(有)大地と自然の恵みとはどんな会社?
「大地と自然の恵み」は1996 年創業。
従業員32名(正社員12名、特定技能実習生14名、パート6名)、年商3億円、香美市でも屈指の企業です。
キーワードは「自分たちが食べたくないものは作らない。」
有機JAS認証の始まる以前から有機農業に取り組み、有機JASの認証(2001〜)の設立当初から認証を受けています。
輪作(注1)の考えを軸に、土壌の力を高め、土地に合う作物を選定することで健康な農作物を栽培。
有機農産物を扱う上場企業などへ向けて契約栽培を行うことで安定した価格での出荷を実現しています。
また、農業未経験者も効率よく作業ができ、それぞれのスキルを高めていけるように様々な工夫をされており、若い農業未経験の方々を今までも多く受け入れてきました。
(注1:輪作とは、同じ耕地の中で数種類の作物を順に栽培する手法。毎年同じ作物を育て続ける連作に対して、同じ害虫や病気が蔓延することを防ぐと同時に、土壌の疲弊を抑制すると考えられている。)
「現在求人を出しておられますが、どんな人に来てほしいですか。」
と質問をしたら、求める人物像がどんどん出てきました。
・具体的に道筋を描いている人。
・元気のある人。
・客観的なものの見方、立体的なものの見方ができる人。
・主体性を持って自ら学んでくれる人。
・自分で考えてから相談してくれる人。
・明日のことだけでなく一週間、一ヶ月、一年先を考えられるようになろうとする人。
・次をイメージして動ける人。などなど。
(有)大地と自然の恵み に入社してくる人はほとんど農業未経験の方ばかりと聞きましたが。
そのとおりです。入社当初は、右も左も分からないのが当たり前です。
はじめは「今日何をしたらいいか」もわからないけれど、自分の頭で考え、体を動かしながら、人に聞き、経験を重ねるうちに明日のことがわかるようになり、一週間後のことがわかるようになり、どんどん先のことが見えてきます。
一方、農作物を育てるときは逆算の考え方で、まず収穫のことを考えます。
いつ、どのくらいの収穫が必要なのか。
そこから逆算していくと、どれだけ圃場が必要なのか、どの時期にどんな資材、作業が必要なのか、いつ植え付けるのか等が決まります。
更に逆算して、植え付けまでの様々な作業や調達する資材が決まります。
それをイメージして動ける力、作業をしながら作物の成長を見守る観察力も必要になります。
日々の作業の中で自分で考え、それを人に伝えて確認し、わからないことはすぐに聞く、それを繰り返す中で成長していくことが大切です。
大地と自然の恵みの効率的な農業は、有機農業の持つ牧歌的なイメージとは少し違う農業に思えますが。
有機農業は「農業」の一つの方法論です。
「業」である以上、ビジネスとしていかに広げられるかが大切です。
一方で、「有機」部分から連想されるような、農的暮らし、人と人とのつながり、環境保全、といったような取り組みもしています。
例えば圃場に病気が広がりだしたとき、慣行農業をしている人にはできないような我慢が必要になります。
予定していたように収穫ができない。
そんな時は日頃から情報発信に力を入れることで培っている、消費者さんからの理解があるので乗り切れます。
消費者さんからは「私の代わりに作ってくれている」といったお声をいただくこともあり、人と人とのつながりのありがたさを感じます。
また、事務所の屋根には太陽光パネルが設置されていますが、これは県などで奨励される以前に先駆けて取り付けたものですし、ミニトマトの加温にはコストがかかっても環境負荷の小さい液化天然ガスを使用しています。
(小田々さんご自身は最近、環境と健康のことを考えて自転車で移動するように心がけておられるそうですよ。)
移住してこられる方にどんな思いを持っておられますか。
有機農業を盛り上げ、若い農業人口を増やすためにいろいろと試行錯誤してきました。
過去には入社当初から独立までの道筋を立てて来た若者や、数年間スキルを磨いて独立を考えるようになり、独立していった社員もおりました。
小作人のイメージで、独立した個人農家を束ねて一緒にやっていくような形を模索したこともありました。
新規就農には補助金などもありますが、ゼロから始めるのはやはり苦労が多いです。
ここにはいろいろな設備が揃っています。
最近思うことは、独立を目指すのもいいけれど、この恵まれた環境を充分に活用して、主体的に頑張ってほしい。
従業員として囲い込むような気持ちではなく、一緒に有機農業やこの地域を盛り上げていきたいという気持ちです。
小田々社長から一言お願いします。
「移住してくるなら、ここに骨を埋めるつもりで取締役目指して一緒に頑張ろうや!」
取材を終えて
ひとくちに有機農業と言っても、抱くイメージは人それぞれです。
自給自足の生活を思い描く人もいれば、どうやったら有機農業で生活し、子育てし、暮らしていけるのか試行錯誤しているひともいるでしょう。
小田々さんはそんな人達の苦労や、挫折も沢山見てきたそうです。
だからこそ、会社という枠組みを利用して、やる気のある若者を応援したい、一緒に地域と有機農業をもり立てていきたい、そんな熱い思いがひしひしと伝わってきました。
・大地と自然の恵み求人情報(大地と自然の恵みウェブサイトより)
https://www.yuukinougyou.com/27714201542477322577122882282322320123923325828982123982469312415.html
(参考資料:大地と自然の恵みHP)
(記事制作:NPO法人いなかみ)