NPO法人FUSEとNPO法人いなかみの連携企画「個人事業」をテーマにした連載記事、第11回をお届けいたします。

香北町に入るとすぐに目に入ってくる建物。撮影・ギャラリー、カフェを併設した多目的スペースと事務所兼スタジオがここ「RUFDiP/たろまろギャラリー」です。ここ数年、香北町名物にもなっている「行列のできるかき氷」でもすっかり有名。今回はオーナーでありフォトグラファーでもある武内忠昭さんにお話をお伺いしました。

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香北町に入ると一番先に目に入るラフディップの建物。「おやつ トースト」の旗にウキウキ気もそぞろ。

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中に入ると、落ち着いて過ごせるギャラリー、スタジオスペース。こだわりの本や雑誌、雑貨がたくさんあり、コーヒーを飲みながらゆっくり楽しむことができる。

好きだった写真が仕事になる日

私が写真を仕事として始めてから17年になります。この場所は、もともと私の実家の田んぼだったところで、それを二つに分けて、こちら側にここを作りました。

写真は若いころから好きでしたが、仕事としては最初まったく考えておらず、趣味で写真を撮っていました。東京へ行って大学を出て、そのまま向こうで車のディーラーや建設会社などに勤め、ふとしたことで香美市に仕事があり、長男だから帰ってこないかと親から言われて帰郷してそのまま仕事をしていたんです。

帰郷すると東京にいた頃より時間に余裕ができたので、地元の写真クラブに入ったりしていたんです。そのうち、たまたま高知市内にある『ラ・ヴィータ』に勤めることになって、ウエディングの営業職に就きました。

そこでウエディングの新商品を作っていくことになり、つくっていくうちに「あなたも写真撮ってみたら」ということになって、そこで初めて「写真を撮ること」と「自分の仕事」のつながりができたという感じです。

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好きなことを仕事にする楽しさと難しさ

結果として自分の好きなことが仕事になって、それは非常に自由といいますか、それまでの会社勤めと違った時間の中で仕事ができるのがとても楽しいですよ。でも考えてみると、サラリーマンだったときの方が今よりも休日を満喫できていた気がします。今になってそれが羨ましく思えるんですよね(笑)。

でも一番したかったことを仕事にできたのはとても良かったと思っています。ただ経営という意味では、好きなこをできればそれでいい!とはいかず、仕事が増えてくるとスタッフも必要になりますので、スタッフを雇えるだけの仕事を維持したり、スタッフが気持ちよく仕事できるような環境づくりが必要だったりと、いろいろなことを常に考えています。

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2Fの奥が事務所になっています。スタッフは全部で4、5人。私以外は全員女性で既婚者ばかり。仕事場に来られる時間で自由にローテーションを組んでいるそうです。

行列のできる夏

この建物ができたのは4年ほど前ですが、カフェの機能を持たせたのは1年たった辺りからです。ここは一階がスタジオスペースになりますが、基本的に写真屋さんというのは、写真を撮りに来る人以外は出入りしない場所なんですよね。だから、せっかく地元に自分の店を出すのであれば、近所の人が集まる場所になればいいなという思いがあり、カフェ機能を持たせました。

撮影ができるスタジオ、写真展や教室などができるギャラリー、コーヒーを飲みながらの打ち合わせなど、複合スペースとしていろいろな使い方ができるようにと、このような感じに作りました。

ですので、基本はコーヒーを飲む程度のカフェ機能だったんです。好評をいただいている『かき氷』というのは、1年目に子どもたちの夏休み教室を開いたことがあって、その時があまりにも暑かったので、飲み物とかき氷を出したのがきっかけでした。

簡単な電動の機械を買って、1杯100円で売ってみたところ、思った以上にみんなに喜んでもらえて『かき氷がいいね』ということになり、翌年からメニューに加えました。ただ、始めるのであればきちんとしたかき氷にしよう!ということで、みんなで試食を重ねてメニューを決めました。

そんなかき氷が口コミで広がって、夏場はカメラマンも総出でかき氷作りに追われ、「ここ、以前は写真屋さんだったけどね」と、お客さんに言われたりもして(笑)夏は思いがけずそういったことになっていますが、来ていただけることに関しては大変喜ばしく思っています。

ただここには「写真」という仕事がおおもとにありますので、待ち時間をゆっくりくつろいでいただいたり、本棚にあるおもしろい本を見つけてもらったり、自分の時間を楽しんでもらったりと、「スペース」を楽しんでもらえる場所を目指しています。

田舎では味方や応援してくれる人が支えになる

うちが軌道に乗っているかどうかは分かりませんが、私の場合、例えばかき氷がそうですけど、まず自分自身が「あったらいいな」と思うものをやろうと考えています。それに加えて、「自分が継続できそうなもの」から実行に移しているので、こうして経営ができているのではないかと思っています。

あと、私は「皆がしていないことをしたい」とずっと思っています。もともと写真は、仕事ではなく自分の作品づくりのために撮っていまして、オリジナルといいますか、常々「人が見たことのない写真を撮りたい」という気持ちがありました。

ウエディングの商品を作る際も、撮り方など、他の写真館さんとは一味違う感じになるようこだわってきました。それが成功したとは言えないかもしれませんが、このやり方が好きで続けてきたことで、今もこうしてなんとか切り盛りできていると思っています。

かき氷にしても、「こういうかき氷があったらいいな」と思ったことをメニューにして出したら、皆さんに口コミで来てもらえるようになったわけですので、自分がやりたいこと、できること、続けられることを実現させていくことが大切なのかもしれません。

資金もそうですね。私は流れでなんとか切り盛りしてくることができたのですが、まったく新しいことをしようという方は、ある程度の資金計画は絶対必要です。私も自分でここを建てて4年になりますが、それまでは、自宅を事務所にしていました。

ここを作る際にはやはりお金も借りなくてはならなかったし、そのお金をどのように使って利益をあげていくかという計画は当然立てました。ただ、それを続けていけるかどうかは、自分自身に聞き、自分ができることをしていくことが大切です。

あと、こういった田舎で事業を営むには、人とのつながりを大切にしていかなくてはなりません。田舎には地元の方がいらっしゃいますけれど、全員が理解してくださるわけではないんですよ。だから、田舎では自分の味方や、応援してくださる方を見つけることも、仕事をしていく上で大変な支えになりますので大切ではないかと思っています。

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窓の外の景色も素晴らしい。

10年後の新しい展望

10年後の夢というのは、1つはここが写真スタジオとして、私以外のスタッフが撮影できるようになって、一段と良いスタジオになって残っていてほしい、ということです。それからできれば、さらに違う形のカフェを作りたいなぁとも思っています。

香北町に生まれ育ち、今こうしてここに住んでいるので、やはり地域の中に外から人が来てくれるような場所を作っていきたいんですよね。できるかどうかはまだ分かりませんが、こんなカフェがあったらいいなぁという話はいつも女房としているんですよ。香北町の自然とマッチした、どこにもないような、わざわざ行きたくなるようなスペースができたらと思っています。

静かに座って、本を読んで過ごすしあわせ。本、写真集、雑貨、そこに流れている音楽。『仕事』と『心地よさ』を融合させた空間は、どこを見てもそのまま武内さんの美学だなぁと思いました。ここでゆっくりしていると、田舎の豊かな時間を再発見できるような気がします。

蛇足ですが、武内さんは月に一度、音楽愛好家の仲間たちと夜通しレコード鑑賞会を開くのだそうです。「なぜ、ここがうちの近所じゃないのだろう!」と思いました。あぁ入り浸りたい!

■RUFDiP / たろまろギャラリー

営業時間:11:00~18:00
【 ラストオーダー 17:30 】
予約不可
定休日:火曜日
※撮影で不在の場合有。要確認。
高知県香美市香北町太郎丸510-1
0887-59-2500

(マップ)

【外部リンク】
RUFDiP WEBサイト
http://www.rufdip.com/

RUFDiP / たろまろギャラリー Facebookページ
https://goo.gl/brwIl7

【関連リンク】
移住者の小さな起業を応援するプロジェクト「いなか・ラボ」スタート
http://inakami.net/works/inakalabo-11381.html

提供:NPO法人FUSE
企画運営:NPO法人いなかみ

この記事を書いた人

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【プロフィール】

渡辺瑠海 わたなべるみ
ライター、編集者、エッセイスト

放送業界を経て25歳で出版の世界へ。東京でライターとして雑誌企画、書籍制作に携わった後2003年に高知にUターン。書籍、冊子を手がける。著書『田舎暮らしはつらかった』『龍馬語がゆく〜日常をハイに生きる土佐弁』『イヌキー・私とトートバッグ犬の10年』高知新聞連載『はちきん修行記訪ねて候』など。

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