NPO法人FUSEとNPO法人いなかみの連携企画「個人事業」をテーマにした連載記事、第14回をお届けいたします。

知る人ぞ知る香美市のおいしいスイーツといえば「おかば」。美良布の国道沿いにある「コンビニエンス おかばやし」の自家製シフォン、プリン、ロールケーキが大人気です。店内に陳列された自家製スイーツ群はまさにパラダイスのよう。今回はオーナーの平山智恵さんにお話をお伺いしました。

おかばやし6

おかばやし8

子どもたちの環境を考えてUターン

私はもともと大栃出身で、学生時代に京都から東京へ出て結婚して東京で暮らしていました。子どもが小さくて、2人目ができたときに「公園も学校も全部アスファルトに覆われた東京で育つ子どもたちは、しあわせなのかな」と考えました。

東京では人工芝の運動場で、土なんか全然ないんですよね。そういうのを見ていたらちょっと不安になったんです。主人と話をして「このままじゃ子どもたちは、土も木も緑も知らずに生きていくんやね、それではいけないね」という考えで一致して香美市に戻ってきたんです。

店を始めたきっかけは酒類販売免許

うちは1999年にオープンしましたので、この店を始めるきっかけは18年ぐらい前になります。ちょうど自分たちが東京からこちらに帰ってきたとき、香北町で小さい商店、酒店などに酒類販売の免許が1軒だけ降りるという話を聞いたんです。

小さいお店ですが、もともと実家の大栃でコンビニのようなお店をやっていて、食品やパン、お酒、アイスクリーム、お菓子を売ったりしていたんです。あわせて、ちょうど香北のこの場所に土地を持っていたため、その免許の抽選に参加することにしたら見事当たったんです。「じゃあ、お店をやらんといかんね」という感じで、このコンビニを始めました。これがこの店の原点です。

おかばやし2 おかばやし3 おかばやし5

焼菓子からプリン、ロールケーキ、シフォンケーキまで、あらゆる自家製スイーツが並びます。

仕事の上での嬉しいこと、難しいこと

この店のことで難しいなぁと思ったのは、結局、コンビニエンスストアがあちこちでどんどん増えてしまって、何か特色のあるお店にしないと駄目だなと思ったことです。かといって、どうすればいいのか、切り替えが難しかったです。

他と同じものを売っても勝ち残っていけないですから、そこは思い切って替えないといけなかった。それが大変でした。厨房が裏にあるため、お菓子は最初からありましたけど、雑貨類は4~5年前から置き始めて、お菓子の種類もどんどん増えていった感じです。

うちのお客さんは、やっぱり若い人やお菓子が目的で来てくれる香美市外の方が多いと思います。地元の方も外に出掛ける時などにはお菓子をよくお使い物にしてくれています。うちのお菓子をいろんな方が口コミで拡げてくれたので、それは本当にありがたいですね。皆さんのおかげだと思います。

おかばやし4 おかばやし1

若者向きの衣類雑貨も豊富。コンビニ、雑貨、自家製お菓子の販売の他にも新聞販売などさまざまな業務を手がけています。「多分どこもお店をやっている人はそうだと思うんですが、いろいろ業務が多すぎて、自分の時間というのがなかなか取れません」と平山さん。

若い人には香美市でいろんな挑戦をしてほしい

若い人たちには、思いきりいろんなことをやってもらいたいです。香美市に来たら、こんな店もある、あんな店もある、こんなに変わったことができる、と言われるような挑戦をしてほしいんですよ。お店だけじゃなく、もっと人と人が繋がるような仕組み、売るだけじゃなく、体験込みで売るみたいなこともできたらいいんじゃないかと思います。

例えば、香美市にはロッククライミングをしに来る方たちもいますから、若い人なら室内のロッククライミング施設なんかもやってくれたらいいのにな、と思ったり。なんといっても「場所」がたくさんあるので。

逆にいうと、ご年配の方には、そういう若い人たちに場所を提供してもらえたらいいなと思うんです。土地だっていっぱい余っていますから。いろんな形態で人口を増やす方法を模索していかないといけませんよね。もっともっと若い人に頑張ってもらいたいです。

おかばやし7
入り口にはかわいいメッセージボードも

10年後のビジョン

景気的にも精一杯なところはありますが、やっぱり10年後もこの店は維持はしたいなと思っています。

日本全体もそうですが、まず高知県の景気が良くならないと、自分たちも本当には良くはならないのかなと思っています。少子化を食い止めて、経済がうまく繋がるように回して行かないと難しい。特にこういった場所は、人口が増えないと根本的にやっていけない状況がありますので。

移住者が増えることは歓迎ですが、高知の人口そのものが増えない限りは、商売のビジョンも見えにくいなというのが本音です。やりたいことがあっても人がいなかったら何もできないですので。

このあたりは人口が減り続けていて、「果たして10年後までこの香北があるのかな」と常々思ってしまいます。でも、10年後もこの店を維持していくために、少しずつ変化しながら歩んで行ければと思っています。

「オカバ」のプリン、シフォン、ロールケーキ。今まで何度もいただく機会がありましたが、実際にお店に来たのは初めてでした。圧倒的な品物の量に驚きましたが、あの美味しいスイーツが店内いっぱいに並んでいるのはパラダイスとしか言いようがありません(^_^) 他には真似のできない想いがぎっしりの店。楽しい取材でした。

■コンビニエンスおかばやし
高知県香美市香北町美良布1347-1

(マップ)

【外部リンク】
コンビニエンスおかばやし Facebookページ
https://www.facebook.com/OKABAkahoku/


(おかばやしを紹介したブログ記事)

・まだ東京で消耗してるの?
高知県が誇る珍百景スポット。最高にカオスな山奥のコンビニ「おかばやし」
http://www.ikedahayato.com/20150924/43101483.html

・高知のモノ・コト・ヒトカタログ
恐るべし!おかばやし!
http://mocotyan.seesaa.net/article/393919068.html


【関連リンク】

移住者の小さな起業を応援するプロジェクト「いなか・ラボ」スタート
http://inakami.net/works/inakalabo-11381.html

提供:NPO法人FUSE
企画運営:NPO法人いなかみ

この記事を書いた人

14914969_1836255106618008_586265616_n

【プロフィール】

渡辺瑠海 わたなべるみ
ライター、編集者、エッセイスト

放送業界を経て25歳で出版の世界へ。東京でライターとして雑誌企画、書籍制作に携わった後2003年に高知にUターン。書籍、冊子を手がける。著書『田舎暮らしはつらかった』『龍馬語がゆく〜日常をハイに生きる土佐弁』『イヌキー・私とトートバッグ犬の10年』高知新聞連載『はちきん修行記訪ねて候』など。

コメントを残す

必須 ※お名前は公開されます。

<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>