NPO法人FUSEとNPO法人いなかみの連携企画「個人事業」をテーマにした連載記事、第10回をお届けいたします。
香美市を取材していると、あちこちで「あの店には行かれましたか?」と言われる店が数件あります。今回のロイヤル ニボシ コーヒースタンドもその一つ。商店街の一角でそっと営業中。店主さんにお話を伺いました。
黄色っぽい建具と’’coffee’’と書かれたペイント缶が印象的。
商店街とエスプレッソと。
この店を始めたきっかけは、「エスプレッソが飲みたかったから」ということが理由のひとつにあります。もちろんそれだけではないですが、お店の方向性を考えるときエスプレッソだけを気軽に飲めるとこってないなぁと思っていました。
お店という意味だけではなく、そういう習慣やスタイルについてもそうです。 店舗を探している時、知り合いを通じて教えていただいたのが今の場所です。 中を見せてもらい、借りることに決めたのはそれから半年後。この店を出すなら、車ばかりが行き来している場所ではなく、人が歩いている商店街がいいなと思っていたので、高知にあるあちこちの商店街を歩いて回りました。
自分の足で実際に歩いてみないと見過ごしてしまうような魅力的な風景が、商店街にはあります。 地方の商店街ってちょっとさびれてきてるじゃないですか。人通りも昔と比べるとだいぶ少なくなってしまって。そんな商店街で「さぁ何かを始めよう!」と思える人は多くないように思います。
ただ実際には「人が居ないからここで店は無理」なのではなくて「店をやってくれないから人が居なくなる」なんじゃないかなと。個人的な意見ですが、イベントをするとその日は人が集まりますが、イベントが終わると元通り。それは後に何も残さず、持続的な活性化には繋がらないんじゃないかと感じています。
賑わいは意図的に「作るもの」ではなくて、結果的に「できるもの」だと思います。商店街は「何もしなくても普段から賑わっている」状態が一番いいですよね。 だから「いつでもお店はここにあるよ」っていう状態をつくることが大事なのではないかと思っています。
今も昔からの景観が残る商店街はそれだけで魅力的だと思います。個性的なお店がいくつも並んだ商店街なんて、歩いたり自転車で通るのが楽しくなると思いませんか?
今日は何があるかな?
この仕事を始めて良かったと思えることは、毎日いろいろな人と出会えることです。 コーヒー屋は、人と情報が集まる場所だと思います。どこからともなくやってくるお客さんや、ちょっとした合間に休憩しにきてくれるご近所さん。今日は誰かいるかな?何かやってるかも?スイーツは何かな? お客さんにとっての、そういう場所になっていけたらなと思っています。
居合わせたお客さん同士、「ここでまた会いましょう」みたいな挨拶も楽しい。 店では珈琲をお出しできるようにしていますが、その他に決まった「やるべきこと」はあまりありません。 いつも、今日は何をしてみようか、と「やりたいこと」の実験をしています。
あ、もちろん真面目に仕事していますよ(笑)
まずは自分が楽しめること。
もし、お店をしたいという人がいれば、「ぜひやってください♪」と言うと思います。 ただ、一番したいことは何なのかということを考えて、やることは絞った方がいいと思っています。 うちの店ではメニューは基本的にシンプルなコーヒーだけ。甘いモノも一応出していますが、作る作業時間が取れなければその日は甘いモノ無し。
優先するのは一杯のコーヒーと、目の前のお客さん。 例えば、ケーキを売りたくてお店やってるんだっけ?ってなるのはちょっと違う気がするんです。ケーキはケーキ屋さんに任せておけば大丈夫なのですから。
ワクワクの種を蒔く
今はコーヒーのお仕事をしていますが、他にもやってみたいことはたくさん出てくると思います。これからも、面白そうだなと思ったことを、実際に試してみる。そして何が起こるか成り行きを見守る。うまくいけばそれでいいし、失敗したらまた別の方法で試してみる。いろいろ実験してみたいなと思っています。常に、自分が楽しいと思うことをしていたいです。
私もエスプレッソが大好きなので、おすすめの一杯をいただきました。「エスプレッソが飲みたかったからこの店を始めた」というちょっと不思議な言葉の意味は、飲んで初めてわかりました。商店街の中の唯一無二のコーヒースタンド。個性が際立ちます。
この日いただいたエスプレッソ。ケニア豆を使った一杯。驚くほどフルーティ!奥が深いなぁと感動します。美味しい!
■Royal Niboshi coffee stand
高知県香美市西本町3丁目1-24
営業時間:9:00頃~18:00 定休日:木曜
(マップ)
【外部リンク】
Royal Niboshi coffee stand Facebookページ
https://www.facebook.com/Royal-Niboshi-coffee-stand-1555526861400986/
【関連リンク】
移住者の小さな起業を応援するプロジェクト「いなか・ラボ」スタート
http://inakami.net/works/inakalabo-11381.html
提供:NPO法人FUSE
企画運営:NPO法人いなかみ
この記事を書いた人
【プロフィール】 渡辺瑠海 わたなべるみ 放送業界を経て25歳で出版の世界へ。東京でライターとして雑誌企画、書籍制作に携わった後2003年に高知にUターン。書籍、冊子を手がける。著書『田舎暮らしはつらかった』『龍馬語がゆく〜日常をハイに生きる土佐弁』『イヌキー・私とトートバッグ犬の10年』高知新聞連載『はちきん修行記訪ねて候』など。 |