NPO法人FUSEとNPO法人いなかみの連携企画「個人事業」をテーマにした連載記事、第12回をお届けいたします。

香美市香北町小川。アンパンマンミュージアムから東に1㎞。国道沿いに見えてくる「フレッシュマートふくどめ」。店に入ると思わず笑顔になる温かいポップの言葉が迎えてくれる。そしてこの店ならではの美味しい逸品も! オーナーの福留拓哉さんと、おじいちゃんの福留文男さんにお話を伺いました。

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フレッシュマート店内。新鮮な魚、地産地消の野菜、果物から手作りお惣菜まで何でも揃います。

文男さんはフレッシュマートふくどめの元祖

ここは商売を始めて65年になります。最初は小さい店で精米、炭、ガスを扱って20年ぐらい商売していましたが、廃業する近所の菓子屋さんを引き継いだのをきっかけにフレッシュマートになって30年ほど経ちます。私らの当時は香北町全体でクルマが6台しかなくて、そんな時代に私が免許をとった関係で、高知との連絡業務も頼まれたんです。

高知に行ったら帰りに市場に寄って仕入れしたり、商品の炭を運んだり、帰りに荷物を上げてきて商売したもんです。その当時はこのあたりにも、たくさんお客さんがおりましたきね。この店のある小川〜西川地区にも当時は家がかなりあって、200〜300人ぐらい人が住んでいましたよ。ところが今では過疎化で住民が少なくてね、商売していても不安になりますよ。(文吉さん)

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《第二回 高知家ポジティブコレクション》で見事授賞した名物「フカの刺身」! 柔らかなフカの湯引きのお刺身に、新鮮なニンニク葉の自家製ヌタが超絶にマッチします。金色に輝く受賞ピンバッチが眩しい!。

歴史あるフレッシュマートを引き継いだ孫の福留拓哉さん

大学卒業後、店を継ぐべくUターンして今年で10年目になります。自分が引き継いでからは、棚の陳列などもだいぶ変えました。昔から来ている人は「陳列が変わってわからんなった〜(笑)」と言われることもありますけれど、ちょっとごちゃごちゃしていた売り場をスッキリ見やすくしました。それから、店内にはちょっとした自分なりのアイデアをちりばめています。

商品やポップはお客さんが来てくれた時に「ここは毎回来るたんびに、何か変わっちゅうねぇ」と楽しんでもらえる工夫をしています。ポップは特に、季節や新しい商品ごとに、常に新しい言葉を増やして、前の言葉を削って入れ替えているんですよ(笑)。

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店内あちこちに「語りかけるポップ」。お客さんも思わず笑顔になる。見るたびに違う、飽きない工夫を凝らしているのだそうです。店内の写真は撮影OK、SNS拡散希望というのも笑えます。さすが、ネタの宝庫です。

この仕事を始めて良かったこと、難しかったこと

昔からこの店を大事にしてくれる人で支えてもらっているような店なんです。お客さんの中には、土佐山田や高知市内に出かけても、そこで買い物をせずに、うちでわざわざ買い物してくれる方もいるんですよね。そういう方がいてくれて、大事にされていると感じるときが本当に嬉しく、ありがたいなぁと思います。

難しかったのは、やはりこういう場所柄、新商品の周知がしにくいことですね。例えば普通のコンビニだったらチェーン展開ですから新商品が出たら全国にPRできます。そのスピードというのは、田舎では真似しようとしても無理があります。

田舎では新しいことをしても、広がるスピードがじわじわで、情報が広がった頃にはそのシステムが廃れていることが多いんです。そういうやりにくさはやはり感じてしまいますよね。

県外に行くと、いろんな店に出かけて観察していますが、「田舎というのは、ひとつの店を大事に育てていく」という魅力があるのかもしれません。ひとつの店で、顔見知りが増えて、つきあいも始まる。それが田舎の魅力なんだろうなと思います。そういう意味では、都会の店と違って、うちには「普段を楽しんでいる」感じがあって、これは都会には絶対真似できないし、こうはいかないだろうとニンマリしています(笑)。

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お店のあちこちに、福留テイスト全開のポップが。取材に伺ったのはちょうど節分シーズン。大量生産ではなく『手作りのおいしさ』にこだわります。

やりゆうよ、Instagram

インスタグラムで「フレッシュマートふくどめ」の、いろいろな商品情報やイベント情報の発信をしています。この辺りは、ゴールデンウィークになると「アンパンマンミュージアム」に大勢お客さんが来ますが、皆さんアンパンマンまでで帰ってしまうんですよね。

できたら、もうちょっと東方面に足を伸ばしてくれたらウチがありますよ♪と言いたいんです。アンパンマンミュージアムから東方面はマップにも情報が全く出ていませんし、まぁこっちまで来ないのも分かりますけど「100人いたらせめて1人ぐらい、来てくれてもいいじゃないの」という気持ちがあってね、悔しさ半分です(笑)。

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店の隣を自由に使える利用者の休憩室に解放。ワークショップや自習室、待ち合わせに、気晴らしに…サービス精神のかたまりなんです(笑)店内で買ったお弁当やゆず入り寿司や鯖寿司なども食べられます。

10年後のビジョン

うちは家族総出で忙しいですよ。移動販売もしていますが、今はデイサービス利用者さんに向けたもので、まだ個人宅まではようやってない状態なんです。僕の仕事は仕入れと経営、設備管理、消耗品、配達移動販売いろいろです。おじいちゃんは今でも車を運転して、山北のみかん農家さんのところに仕入れに行ってくれています。

市場で仕入れるときれいな商品は手に入りますが、その分値段が高くなるので、直接農家さんから仕入れるというのがおじいちゃんのやり方です。おかげで品物も多くて助かっています。地域イベントには積極的に出店しています。保育園のバザーなんかも積極的に行きますよ(笑)。そういった場がとても好きなんです。本当はもっと広げて行きたいんですが、忙しくてなかなか追いつきません。

10年後。細々とでいいから、この店を続けていきたいとは思っていますが、実際のところどうなるかは誰にもわからないですよね。このあたりは人口が減ったのに、コンビニエンスストアが増えてきましたからね。

だけど、そんな中で、普通のコンビニでは買えない商品がうちにはあるので、それをありがたいと言って買いに来てくれるお客さんはいるんです。しかし、やはり過疎化と共にそういった人も減っていくのではないかと。そういった声に、いつまでうちは応えていけるかと考えたら、やはり10年後はわからないです。

事業を起こす人へのアドバイス

「最近は事業所の役割形態が変わってきている」というテレビの番組を見ました。僕が見たのは香川県の事例で、事業所の一階がうどん屋で、2階が製材所をしているというものと、健康アドバイスができる看護師の資格を持ったマスターが経営する喫茶店というものでした。

そういうのを見ていたら、「もう、今からはいろいろせないかんなぁ」という気持ちになりますね。確かに、そうでもしないと話題にもなりにくいだろうし、単体では難しい時代だろうなぁ、と、ひしひしと感じています。だから、これから事業を起こそうとするなら、ひとつの事だけにこだわるんじゃなくて、いくつもの事ができるように考えてみたほうがいいかもしれない、と思いますね。

私自身、最初にこの店に入ってびっくりしたのは、その温かいポップの言葉でした。何も言わなくとも、カゴを持って買い物すれば、お店が語りかけてくれる。そんな店づくり。商品の陳列から選びまで、まさに「ふくどめらしさ」に溢れていて嬉しくなります。

「アンパンマンミュージアムからわずか3分、東に足を伸ばせば高知家が誇る、麗しの『フカ刺しと自家製ヌタ』にありつける」。これは覚えておかなきゃ損ですよ。

■フレッシュマートふくどめ
高知県香美市香北町小川151-1
営業時間: am7:00〜pm7:00
定休日:日曜
(マップ)

【外部リンク】
フレッシュマートふくどめ Instagram
https://www.instagram.com/fm_fukudome/

【関連リンク】
移住者の小さな起業を応援するプロジェクト「いなか・ラボ」スタート
http://inakami.net/works/inakalabo-11381.html

提供:NPO法人FUSE
企画運営:NPO法人いなかみ

この記事を書いた人

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【プロフィール】

渡辺瑠海 わたなべるみ
ライター、編集者、エッセイスト

放送業界を経て25歳で出版の世界へ。東京でライターとして雑誌企画、書籍制作に携わった後2003年に高知にUターン。書籍、冊子を手がける。著書『田舎暮らしはつらかった』『龍馬語がゆく〜日常をハイに生きる土佐弁』『イヌキー・私とトートバッグ犬の10年』高知新聞連載『はちきん修行記訪ねて候』など。

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