NPO法人FUSEとNPO法人いなかみの連携企画「個人事業」をテーマにした連載記事、第5回をお届けいたします。
倉庫のような広い店はまるでアンティークの宝箱!今回は4年目を迎えるAntique doorオーナー 藤田雅統さんにお話を伺ってきました。
アンティークが心から好き
藤田さんは安芸市出身。8年前までは古着屋さんのオーナーだったそうです。どうしてこの仕事に変えたのですか?
洋服を陳列するための什器として古物を使っていくうちに、今まで見たことのないような古物にいろいろ出会って、そういったものに触れていくうちに、古着より古物の方にのめり込んでしまったのがきっかけです。
僕は古着もそうですが、古物という古いものが大好きなんです。だから、好きな物に対してこの仕事のやりがいがとても大きいんですよ。好きなことを仕事にできたということはやはり一番大きな喜びです。
時々声がかかって古い蔵の買い取りなどで品物を見に行ったりする時は、本当にワクワクしますよ。今までで印象に残っている仕事は、僕がこの仕事を初めて一番最初に行った買い取りのことです。いきなり6階建てほどの大きなビルで、しょっぱなから僕の手には負えないような買取の量でした。
ほんと、古物の山でしたよ。その時の自分の感覚では、まだ古物の使い方が思い浮かばなかったというのが大きいです。そういうことってあるんですよ。今考えると、あれも使えたなぁ!これも使えたなぁと思ってしまって、まだすごく頭に残っているんですよね(笑)。
ウェディングのレンタル、インターネットオークション、同業者さんへの卸などもしています。時代を経て藤田さんに見出されたアンティーク。一つ一つ見ているだけで時間があっという間に過ぎて行きます。
香美市に移住したきっかけ
店を始めるにあたって、1年ぐらいずっと物件を探していたんです。在庫も結構ありそれなりのスペースが必要だったので大きな倉庫を探していたんですが、なかなか理想とする場所とか大きさの物件がなかったんですね。
そんな時に、たまたまこの物件がみつかったんです。下見に来た時に、この町並みと広さがいいなぁと思いました。駐車場も広かった。ここなら、マルシェのようなこともできるなと思ってすぐここに決めたんです。
ここはもともと自動車の整備工場みたいなところだったみたいですね。だから洗車もできるよう、倉庫の前に広いスペースをとってあったんでしょうね。
香美市は結構僕らと同世代ぐらいの方が多いんです。僕と一緒ぐらいのタイミングで香美市に入ってきたのは、例えばカフェの「ヒビヤレコーズ」さんとか、最近はコーヒースタンドの「ロイヤルニボシ」さんとかが入って来てくれて、僕としてはすごく嬉しくなりますね。
これからもっといろんな業種の面白い店が入ってきてくれたら、香美市はさらに面白くなると思います。そういう意味で、可能性がすごくある土地だなぁと思いますね。
この仕事を始めて気づいたこと
やはり、ものの見方が変わりました。例えば古物の作りであったりとか、使っているネジとか色の塗り方、それから、これがどういう風に時代を越えてきたのか、ここをこうすれば直るぞという知識がついてきたことですね。
逆に難しいのは、古い物の中で、ちょっと変わったものなんかを見つける時は苦労します。僕は見たこともない物を探して仕入れようとしているんですが、昔の人が作った独特の形とか、手作りの物、焼き物とかもそうですが、そういうものを探そうとしても、なかなか出会えない。これはなかなか難しいことなんですよ。
doorにはこれから店を始めようという美容室やカフェの方が最近とても多いそうです。コレクターの方も結構来られるし、幅広い年齢層に愛される店です。特に女性客が多いそうですよ。
個人事業を軌道に乗せるポイントは
周りを巻き込む事ですね。いろんな人の協力は絶対に不可欠ですから。香美市に僕が来た時はみんながすごく協力してくれて、本当にいろいろと助けてくれたんですよ。
ここで店を始めようと改装している時に、隣の穂岐山刃物さんが「何を始めるの?」と声をかけてくれて、「はい、こういう店を始めます」と言ったら、チラシを高知市内全域にパーット撒いてくれたり、口コミで宣伝してくれたりして、本当にありがたかったです。最初は変わった人だなぁと思っていたんですけど(笑)、本当に顔の広い方だったんですよね。
オープンして3ヶ月目ぐらいの時にオープンイベントをしたんですが、その時にも近くのチムニーさん(パン屋)とか、いろんな人が集まってくれて、1回目にしたら本当にすごい集客になって嬉しかったですよ。だから、やはり人って大事だなぁと思います。
今の時代は、ネットオークションや通販だけで商売できないこともないんですが、やっぱりこういった店舗を持って、古物が好きな人と実際に会って、その商品についていろいろと話ができるのは楽しいですね。それがすごく刺激になるし、いろんなヒントやアイデアの元になる。すごく大事だと思うんですよ。
藤田さんが一番お気に入りの場所で。このdoorは藤田さんの手作り。この倉庫をひとつひとつ自分で改装していったそうです。
10年後はどんな風にお仕事を展開されていると思いますか?
僕は今リフォームと平行してこのお店をしているんですけどリフォームもこのアンティーク部材などを使ってやっているんです。10年後はそういう方面をもっと広げたいなと思っています。
リフォームにウエイトを置きながら、アンティーク部材の買い付けをして仕事ができたらいいなと思っています。海外にも買い付けに行ってみたいですね。他の人が行かないような国に、何か面白いものがあるんじゃないかなとか、そういうことがしてみたいと思います。
アンティークを語る時の藤田さんの目はキラキラしていました。doorを通じてワクワクする未来が広がっている、そんな印象を受けました。一つ一つじっくり見て回りたい倉庫の中。本当に楽しい取材でした。
Antique door
高知県香美市土佐山田町栄町56-1
【外部リンク】
Antique door Facebookページ
https://www.facebook.com/Antique-door-243098025739023/?fref=ts
【関連リンク】
移住者の小さな起業を応援するプロジェクト「いなか・ラボ」スタート
http://inakami.net/works/inakalabo-11381.html
提供:NPO法人FUSE
企画運営:NPO法人いなかみ
この記事を書いた人
【プロフィール】 渡辺瑠海 わたなべるみ 放送業界を経て25歳で出版の世界へ。東京でライターとして雑誌企画、書籍制作に携わった後2003年に高知にUターン。書籍、冊子を手がける。著書『田舎暮らしはつらかった』『龍馬語がゆく〜日常をハイに生きる土佐弁』『イヌキー・私とトートバッグ犬の10年』高知新聞連載『はちきん修行記訪ねて候』など。 |