物部に住み始めて何ともびっくりしたのが、おじいさん、おばあさんたちが話してくれる奇怪なお話の数々。
今回は物部で聞いた、怪異現象のエピソードの一部をご紹介させてもらいます。
「ある人が、別府の行者山の険しい斜面の砂防工事をするのに、朝一番に仕事場へ向っていたところ、細い道を唐傘くらいの太さ(直径20センチくらいか)のヘビが道を横断していた。これは不吉なことと思い、仕事をせずに帰って、仕事も辞めた。急に辞めたのでまわりが心配がったが、理由は決していわなかった。他言すれば災いが起こるという意識があって、その後10年は決して人に言わなかったそう。」
山で出会ったヘビや化け物、起きた怪異は他言すれば災いが身に降りかかる(裏を返せば「怪異などをただの迷信と思って見くびっていると事故や怪我をする」)という話はよく耳にしました。
タヌキに化かされたという話もよく聞く話です。
魚を釣りにいって、なかなか帰ってこないと思ったら遅くに「大漁だ」と言って帰ってきたが、カゴの中をよくみてみると全部葉っぱだった。タヌキが知らない間にとり憑いていた(ための幻想だった?)ようで、人によってはタヌキに憑りかれやすい人がいた。
不思議な話も聞きました。
赤岡からの塩売りが来たが、お金がなくて塩が買えなかった。ちょうどそこに鷹が飛んでいて、塩売りが「鷹を落としたら塩をやる」といってきたので、法をかけて鷹を落として塩をもらった。塩売りと別れたあと、鷹にかけた法がとけてどこかへ飛んでいった。それを見て、塩売りが塩を返してほしいといったがダメだったという話がある。
これは数々のお話の一部なので、もっと怖い話や謎めいたお話などもたくさんありました。
なんにせよ、こういった話が何気ない会話の中で、大真面目に語られるのです。
とはいっても、科学も進歩したこの現代。伝説や何か違う現象だったのでは・・・?、と思って聞くのですが、「○○というところで××さんが△△になって・・・」など固有名詞や具体的な事象が出てくると、「そういうことがあったんだろうな」と思わずこちらも納得せざるを得ません。
現実とは思えないような怪異現象をただの迷信として一笑に付すのではなく、大真面目に語る物部の人々。
・・・もしかしたら私も化かされていたのかもしれません。
この記事を書いた人
【プロフィール】矢野 恵 高知市出身。2012年10月より3年半、物部町の地域おこし協力隊として活動後、現在土佐山田町在住。 物部の人、自然、文化、いざなぎ流をこよなく愛する。物部や香美市の魅力を発信し、地域文化の面白さや奥深さを伝えていこうと鋭意活動中。 |