(※本記事には頭骨の写真などがでてきます。苦手な方はご注意ください)
田舎で暮らしていると、必ずといっていいほど野生動物による被害(獣害)の話を耳にします。
「せっかく野菜を作ってもサルに全部食べられてしまう。」
「シカがきて悪さをするので、畑の周りをネットで囲っている。」
などなど、今では害獣扱いされているシカ、サル、タヌキ達…。ただ、田舎ではこうした動物資源を素材として作られた道具等がいくつもあります。今回は物部町で見聞きした、野生動物の利用の一例を紹介したいと思います。
その1「サル」
サルは薬や魔除けとして使われていたようです。頭蓋骨を蒸すようにして焼いて作る“黒焼”は、婦人系の病気に効くといわれ、肉を塩漬けにしたものは下痢に効くそうで、今も現役で利用されている方がいらっしゃいます。
その2「タヌキ」
タヌキも薬として利用されたり、皮は加工して実用的に使われていました。
その3「シカ」
シカは角(つの)が毎年生え変わるので、山で拾ったり、狩猟で仕留めたものは様々な場面で利用されています。
動物も大切なひとつの命
物部の別府に住む猟師さんがこんなことを言っていました。
「今は趣味で狩猟をしている人もいるが、自分は父から「食べない猟はするな」と言われてきたので、猟をしたら必ず捌いてお肉をいただいている。以前は、動物の舌か耳か心臓の一部を枝にさして山の神に捧げた。山の命なので、無駄な殺生はしない。」
今のように、簡単に物を手に入れることができなかった時代、物部に住む人たちは動物や植物などの自然資源を利用し、知恵と工夫を重ね、それらを生活文化の中に取り入れて暮らしていました。
自然の恵みを享受しつつ、自然に対しての感謝する気持ちを持ち続けているという姿からは、動物も自分たちと同じ生き物であり、一つの命をいただくということの重みを感じさせられました。
害獣とされている動物との関わりの中にも、学ぶべきところがたくさんあり、物部の方々に聞いた興味深いお話はどれも心に残るものとなっています。
この記事を書いた人
【プロフィール】矢野 恵 高知市出身。2012年10月より3年半、物部町の地域おこし協力隊として活動後、現在土佐山田町在住。 物部の人、自然、文化、いざなぎ流をこよなく愛する。物部や香美市の魅力を発信し、地域文化の面白さや奥深さを伝えていこうと鋭意活動中。 |