田舎暮らしのコスト

田舎暮らしはお金がかからない。それは確かにそうであると言えるし、そうでもないと言えることもあります。生活費の大部分をしめる家賃住居費、額面だけ見ると確かに安い。都会のマンションの管理費と、田舎の一軒家の家賃が同じだったりもします。ただしここに、見落としがちなコストがあります。それはずばり、自分ですることの労力と時間です。

管理費は0円?

私が神戸に住んでいた時、借りていたマンションの管理費は一ヶ月あたり5000円から8000円。家賃と一緒に引き落とされるので、「管理費」として単独で意識することは少なかったのですが、今にして思うと年間で6万円から10万円弱と、結構な出費です。マンションの管理費には、共有スペースの掃除や、植木の手入れの費用があり、この他に外壁や水道施設の補修費用を管理費とは別に積み立てている場合もあります。

一方田舎の一軒家で管理費が必要な物件はほとんどありません。それは同時に、家の前の道や、住居周りの管理は各自で行う、ということなのですが、これには思いのほか費用と手間がかかります。集落の中を走る道ぞいも年に1回以上、住人みんなで草を刈りますが、これらの仕事は地元の自治会で分担して取り組んでいます。

額面だけでは見えないこと

マンションの場合、共有スペースは通路や階段、エントランスと自転車置き場と、ゴミ捨て場といったところですが、田舎の集落では自分の家とその周辺の管理の他に、集落の中を走る道路や、赤線道と呼ばれる人の通る農道、お宮や集会所があり、これらの保守管理をすべて外注したりすれば、大変なお金がかかります。しかも住人は一棟のマンションよりも少ない場合も多いので、住人ひとりあたりの労働負担を日当に換算してみれば、かなりの額になるはずです。

これから田舎に移住してみたいと考えている人に、是非知っておいていただきたいのは、田舎は家賃は安いけれど、あらゆる場面で、労働を提供する場面があって、それがあって家と集落が成り立っているということです。ですから、自治会に入らない、というのは、マンションでどこかの世帯だけ管理費を払わない、と主張するのに近い不自然さがあります。

地域の人々と語り合う場所と機会があるということ

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清掃や草刈りの他、自治会で行うお祭りや行事では、たとえばそれぞれに違う信仰や考え方を持っていたとしても、定期的に住民同士が顔をあわせ、細かい問題を調整する機会になっているのです。特に移住者の場合、習慣も常識も地域の人と異なることが多いので、日頃から周囲に疑問をなげかけたり、相談したりする機会があれば、無用のトラブルを事前に避けることができます。

都会のマンションは、近所付き合いに悩むこともほとんどなく、鍵ひとつで管理できて確かに便利ですが、私個人としては、この一見面倒な田舎のシステムも悪くないと感じています。煩わしいと感じることもある一方で、もし私に何かあれば、集落のみんなが気にかけてくれるに違いないと思えるのも、日頃の共同作業や、お祭りでの交流があってこそのことなのです。

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