★香美市に移住した素敵な方をご紹介!
わたなべ農園 渡邉晃充さん志津江さん
桜のつぼみも膨らみはじめた、あたたかな土曜日。香美市土佐山田町佐岡にある「わたなべ農園」さんにお邪魔しました。取材に訪れたこの日は、土佐山(高知市)からミツバチの巣箱づくりを4家族が体験しに来られていました。農園を運営されている渡邉さんご夫妻は、2003年3月、長女小3、長男小学校入学を機に田舎で子育てがしたいと考えて、高知市から佐岡へ転居されました。
ありがたいご縁で結ばれて 11年のあゆみ
いなかみ
お庭も広くて、日当たりも良いし、すてきなお住まいですね~
志津江さん
ありがとうございます。土佐山田町に移住して12年目になりますが、とても住みやすく気に入っています。石川県出身(4歳から18歳までは徳島県に居住)の私は、岡山県出身の夫と大学で知り合いました。大学卒業後は高知市内で学習塾を開き、結婚、出産後も仕事を続けていましたが、子育てには住む環境が大切だと移住を決めました。
親戚や知人はいませんでしたが、ご近所や子どもたちの学校で知りあった友人に恵まれ、少しずつこの地に根を張ることができました。田舎のやわらかな空気や静けさ、土の感触はやはりいいものです。こちらで子育て出来て本当に良かったと思っています。高知市の友だちのところに遊びに行くときには、うちの野菜をお土産に持っていくのですが大変喜ばれますよ。
いなかみ
どのように物件を探されたのですか?
志津江さん
手頃な中古住宅を購入したいと思い、不動産屋さんを訪ね歩きました。その頃2歳の息子を抱きかかえながら探し回りましたが、高知市内ではなかなか思っているものは見つかりませんでした。結局、知人からの紹介でこの家に辿り着くことができたのは、息子が小学校へ入学する前でした。
晃充さん
北に山をうけ、南東が開けた日当たりの良い場所を希望していました。20年以上前、高知市から香美市香北町の職場に通勤していた時、「この辺(佐岡)で暮らしたい」と妻に話したことがありました。初めて家族を連れてきたとき、離れにある風呂や便所に傘が置いてあるのを見て、長男に「どうして傘があるが?」と聞かれました。
「雨の日には傘がなかったら濡れるだろ」と言うと、「傘がいらんトイレを作って」と言われました。そこで古民家の改築と耐震補強をしました。そう話すご主人は高知県庁に勤務され、香美市や香南市では給食用野菜の生産拡大など、農業指導をされています。
晃充さん
趣味は木工ですよー
この日は、若い世代へ日本ミツバチの特性や、自作の巣箱を使って採蜜方法を丁寧に教えてくださいました。重箱型巣箱のメリットは蜜の部分のみを取り出せることです。
いなかみ
ふむふむ。 蜂さんって勤勉ですね。 木材の表と裏も知らなかった私はただ頷くばかりでした。
余分なものは何も足さない自然の摂理にそった農業
志津江さんはご自宅といっしょに手に入れた畑で家庭菜園を始めました。最初はわずかな農地でも管理が大変だと思われたそうです。
志津江さん
長男が小学校を卒業する年、防虫ネットをかけて育てていたカブが立派に出来ました。私も畑の6年生、卒業制作のつもりで作ったカブを、レストランで使ってもらえないかとお店を探しました。丹精込めて作った野菜をこだわりのシェフに使ってもらえた時の喜びは、何物にも変え難いものでした。家庭菜園から営農へ踏み出す一歩でしたね。
いなかみ
野菜作りって天候や害虫に左右され、本当に大変なお仕事だと思います。
志津江さん
そうですね。有機栽培で野菜づくりをしているので、草の管理や虫取りは確かに手間がかかります。虫取りしていてふと気づくと、「無」になっている自分がいたりして(笑)。土の微生物や昆虫などの天敵といっしょにやっている感じがします。自然は厳しいけれど優しく、そして有難いと思いますね。
たくさん失敗もしました(笑)。コツコツ地道にやっていると、野菜の味に関心のあるお客さまにも恵まれ、いろんなご縁で少しずつ花が開いているような気がしています。今は輪作するために耕作する土地を増やし、夫が受け継いだ岡山の畑(瀬戸内市牛窓町)でもタマネギ・かぼちゃを栽培するなど、機械の力も借りながら、とにかく元気に農業していきたいと思っています!
野菜づくりに対する情熱を知り「ぜひ弟子入りさせてください!」とお願いしたくなるほど、魅力的な有機栽培農家さんでした。帰宅後こだわりの人参を皮付きのままスティックにして、生でいただいたのですが、やわらかくフルーツのような甘みとコクがあり、ほっぺたが落ちるほど美味しかったです。
いなかみ
これから挑戦してみたいことはありますか?
志津江さん
野菜づくりもまだまだ勉強中です。美味しい野菜をつくりつづけていると、その先にいろんな方とつながっていけるチャンスがあると思っています。《感動はひとを動かす、明日をつくる》これが私のモットーです ^0^/
晃充さん
さまざまな理由で移住される方はたくさんいます。皆さんりっぱな特技を持っておられます。そんな方々と地元の住民とが有機的に結びついて、地域が発展できる仕組みができないかと考えています。
いなかみ
あれ? それ(写真)は何をされているんですか?
志津江さん
これね、電気温水器をリサイクルして作った釜です。冬は干し芋づくりに大活躍。安納芋などを蒸さずにぐつぐつ煮てから切って天日に干します。煮汁を捨てずに毎日火を入れ、シーズン中、差し水をしながらずっと使います。煮詰めるほどに独特の甘みと照りがでてきて、噛むとまるでキャラメルのような食感になります。ただ、干しすぎるとかたくなりますが…。
いなかみ
えー!そんな裏技知りませんでした。私も東山(干し芋)は大好物でよく作りますが、煮汁捨てたらもったいないですね!今後実践してみます。ありがとうございました。
志津江さん
今日はみんなでお餅をつきましょう!
息のあったお二人は、特製のかまどでもち米を蒸して、きなこ餅をたくさん振る舞ってくださいました。みんなでついたお餅はあっという間にできあがり、美味しくいただきました。
いなかみ
これから移住してくる方へ何かアドバイスありますか?
志津江さん
私たちもここへ落ち着くまでにいろいろな物件を見ました。でも、最終的にはここだという家にたどり着きました。これって、ご縁ですよね。やはり、何か目に見えないご縁に導かれていると感じます。自分たちの思いと感性を信じてくださいね。
やっぱり田舎はいいですよ。それと、私たちが越してきて一番にこころがけたことは “あいさつと草刈り”でした。これは基本です。あとは、気楽になじんでいってください(笑)
現在に至るまで、口には出さないご苦労もあったと思いますが、とことんこだわりの道を歩まれたお二人。私もそうやって年を重ねていきたいと憧れるご夫婦でした。本当にありがとうございました。