香美市物部町には「火鎮祭相撲大会」という地域行事があります。
最近のイベントは集客のために地域外へもPRに躍起になる傾向がありますが、これは物部町地域の方や物部町に関わる人が行う、物部町地域のためのイベントで、地域外の方にはあまり知られていません。
村の小さなお祭りか、と思う方がいらっしゃるかもわかりませんが、あに図らんや、これがどっこい、すごい相撲大会なのです。
相撲大会の名前が「火鎮祭」。これには理由があります。
それは昭和32年(1957)11月29日午後6時10分頃のこと、大栃町の商店街で火災が発生。
出火と同時に地元の他に土佐山田町以北の香北地区の各消防団も応援に駆けつけ、消火につとめたものの、現場は中心商店街で人家が密集、道路が狭いため大型消防車の活動が思うようにならず、その上やや強い北寄りの風にあおられて、住居、店舗、工場等22棟が全半焼するという大火となりました。
出火後約2時間で消し止められ午後8時頃鎮火していますが、この火災で消防団員を中心に重軽傷者8名。原因は火元となった飲食店で風呂を炊いていた時に、焚き口の火がもれ、ちょっと目を離した間に、囲い板に燃え移ったものでした。
大火から1年後の昭和33年(1958)、当時の物部村(現香美市物部町)ではこれを契機に全村を挙げて防火思想高揚のため、同村消防団、高知新聞社共催、物部村、大栃商工会などの後援で火災発生防止安全祈願の火鎮祭を行い、第1回火鎮祭奉納相撲大会を開催することになり、これが今日まで毎年続いています。
よって、今年は第61回大会。
初めることより続けることが大変なのに、これだけの大会を続け、ますます盛り上がりを見せる物部パワーに感服です。
大会は午前10時の小学生相撲から始まります。その後、個人戦、団体予選、団体決勝と盛り上がっていきます。
力づくの中年層に柔軟な動きの青少年たち、テクニックの中高年と、様々な取り組みが続き、観客らの声援は飛び交い、神社境内は大賑わい。
一番の盛り上がりは、5人を連続で負かすと賞品が出る「飛び付き五人抜き」。勝ち抜き力士以外は何度でも挑戦でき、参加者は体中を土だらけにしながら「さあ来い」「何くそ」と力闘を繰り広げます。
そして、大会の最後には「もち投げ」もあります。
町内の火鎮安穏を願い、また、相撲を通じて住民の親睦と交流の促進、地域の活性化を図ることを目的とする香美市物部町火鎮祭。
地元の小中学校の児童生徒や教職員、森林組合や地元の各種団体・市役所の職員、消防団、南国署の警察官らが、まわし一丁で寒さをものともせず、ぶつかり合う熱き祭り。
皆様からも拍手と声援を送りに、物部町へお出かけください。
( 香美市物部町大栃 八王子宮)
NPOいなかみ