RKCラジオ「あさドレッ!わいど」の土佐弁クイズのごとく、皆様の土佐弁レベルを試してみましょう。(^^)
昔、お花というて、働き者で器量好しで、その上気立ても優しゅうて、槇山中でも評判のええ娘がおった。
両親はとうから死んでしもうて、おばばと二人で住んでおったそうな。
おばばは、もう足腰が弱くなっておったので、お花が精出して、機を織って、一反織りあがると入用の物とかえて、おばば大事と暮らしておった。
さて、そのお花の家から川一つ隔てた隣りの村に、おかじというて、わがままで、ごくどうされの娘がおったそうな。
おかじは、お花があんまり村中のほめものじゃきに、いつも憎らしゅうに思うておったが、ある日、ふと何ぞ悪い事を思いついて、お花の家へやって来た。
そうっと、家の中をのぞいてみたら、だあれもおらん。
「お花やんよう」と、呼んだみたが、なんちゃあ返事がない。
「ぼっちりええ」と呟いたおかじは何と、持ってきちょったハサミで、チョキ、チョキ、チョキ・・・と、織りかけの布を緯通りに、切って切って切りまくってしもうた。
悪い奴じゃ。
ニタッとうす笑いを浮かべたおかじは、知らん振りして、川を渡っていんだそうな。
一方、お花はちょうどその時、おばばを背負うて、両親の墓参りに行っちょったのじゃった。
家へ戻り着いたお花は、織物があとちっくと織ったら、一反上がるきと思うて、機のくへいてみてびっくりした。
「おっとろし。早よ来て、おばばよう」いうて、おばばを呼んだ。
おばばがねぜって来てみたら、この始末じゃ。
「お花よ、たかあ弱ったのうし」と、泣き顔になった。
お花はびっくりはしたが、気をとりなおし、小切れになってしもうた布を継ぎ合わせ、継ぎ合わせて、こんまいお参り袋を幾つも幾つも縫うた。
全部縫い上げるとお花は、それを売りにいった。
奈路の人らが、
「こりゃいいお参り袋じゃ」「ねんに縫うちょる」言うて、値良うに買うてくれたが、一つだけ売れ残った。
お花は売れ残った一つのお参り袋を持って、おかじの家の前を通って戻りよったが、門から、おかじが昼寝しゆうのが見えたきに、このお参り袋をやったらなんぼか喜ぶろうと思うて、「おかじやん、おかじやん」と、おかじをゆさぶってみた。
やっと目を覚ましたおかじは、あのお花が来ちゅうき、びっくりして、ふるえだしたそうな。
そいて、
「お花やん許いとうせ。あてが悪かったき、許いとうせ」と、言う。
お花はお花で、わきゃあわからんが、
「おかじやん、このお参り袋、一つ売れ残ったき、おまんにやろうと思うて寄ったがよ。おまん、どうしてふるえようが・・・」と言うて、目の前へお参り袋をぶらさげて見せた。
おかじは、頭を畳へこすりつけて、何回もお花をおがんだそうな。
おかじのようすで、お花も段々わけがわかってきたが、
「ええちや。頭をあげや。一反で売ったよりゃ、縫うた手間いわんと高うに買うてもろうたき、おまんにもやりたいがよよ。
取っちょいて。ほんなら、おいまよ」言うて、家へ帰ったそうな。
おかじはそれからというもの、生まれ変わったように、ええ娘になって、親にもよう仕えるようになったそうな。
人に悪さをせられても、腹をたてんと、まことの心に雲がかからざったら、鬼をも仏にするものよ。
<引用>
これも方丈ものがたり〜ものべの民話〜 発行:高知県香美郡物部村教育委員会
NPOいなかみ