はじめに
高知県香美市に移住して30年近く。香美市の中でも里暮らしエリアの香北町で育った我が家の子どもたち。第一子は東京で大学生活を経て来年度就職です。
そんな我が家の第一子。無事就活を終えた今、「田舎育ちが役に立ったかもしれない。」と申しております。移住のお手伝いを仕事としている身としてはこれを言いふらさない手はありません。以下、項目ごとにご報告いたしますので是非是非御覧ください。
その1:話しかけやすい雰囲気を醸し出している
東京に出た直後から申しておりました。「なんか、人に道を聞かれる。」
これは私自身の話ですが、香北町で道を歩いていると知り合いに出会います。”男は一度外に出ると七人の敵がいる”などといいますが、田舎の人は外に出ると知り合いが待ち構えて(?)います。知り合い人に会えば自然と挨拶がかわされます。その後世間話などの情報交換、時には菜園で取れた野菜のやり取り等が行われ、家庭菜園を目指して家を出たものの、うっかりしていると畑にたどり着かずに昼がきたりしてしまいます。
なにが言いたいかというと、人から話しかけられることを前提に歩いているのです。
その習慣が身についている我が子は、おそらく都会を歩いていても話しかけOKの雰囲気を醸し出しているのでしょう。このような説明しがたい「雰囲気」を自然と身につけることができるのは大きな強みと言えるでしょう。
その2:挨拶ができる
TPOに応じた挨拶ができることは評価されたと思います。
前項と重複しますが、歩いていたら人に合う。人にあったら挨拶する。特に小学生の通学時などは地域の方が見守りを兼ねて家の前を掃除していたり、犬の散歩の時間を子どもの通学時間帯に合わせてくれている方も多のです。また普段から挨拶の良い子は大人が褒めてくれます。自然と元気に挨拶する習慣がついて大人になります。
集団面接のときなどは、はじめの挨拶がしっかりできるとそれだけで好印象に繋がります。実際、集団面接の開始時に声を出して挨拶したのは我が子だけで、他の学生が会釈だけだったことには逆に驚いたと語っていました。
その3:年上の人と話なれている
高齢化が問題になっている中山間地域。香北町もご多分に漏れず高齢者がたくさんおいでます。それぞれお仕事をされていたり畑をされていたり、グループ活動をしていたり、お家の前で草を引いていたり日向ぼっこされていたり、みなさん体力に合わせて活動されています。そんなみなさんに話しかけてもらえる子どもたちは自然と様々な話題に触れることになります。
そんなわけで、学校の中だけでない多様な年齢層の方、多様な価値観や経験を持った方と接することに慣れています。
面接時には年嵩の面接担当の方にも物怖じぜずに話せたのではないでしょうか。
その4:広義のモノづくりに思いを馳せることができる
香美市での暮らしは「作り手の顔が見える暮らし」でもあります。
普段食べる食材も、誰が畑で作った野菜か、誰が田んぼで作ったお米か、誰が釣ってきた魚か、誰が仕留めて肉にしたイノシシか(!)食卓に乗るまでの過程が見えます。お祭りもイベントごとも誰が準備したのか見えるし、時には自分自身が作る側にまわります。いつも身近に作り手の気配を感じながら育った経験がモノづくりやシステム構築などに対する興味に繋がりました。
我が子は業種をあまり限定せずに就職活動をしており、人事の方に多業種にわたっての就活は珍しいと言われたそうです。でも我が子の中にはものづくりの延長という意識があったようです。お陰で各業種の中から自分に合いそうな社風の企業を探して受けることができました。どの会社も受けたくて受けた会社ばかりだったので、複数の内定をいただいたときにはどこを選ぶのか随分迷っていました。
その5:困ったときに人を頼れる頼られなれている
人を頼ったり頼られたりは、仕事をするうえで大切なスキルです。香北町では地域の人がお互いに助け合う文化が根づいているため素直に頼る頼られることが身についていたようです。(このスキル、オンラインゲームでもかなり培っていたようですが…)
就活中のグループワークでは先頭に立って、メンバーそれぞれの得意なことを出し合ってもらうことでスムーズに課題をこなすことができ、高評価に繋がりました。
まとめ
以上のように、香美市で育ったおかげで自然に身についたスキルが就活を進める上で大きな助けになったようです。これらのスキルは、一般に家庭での躾や学校での教育によるところが大きいのではないでしょうか。それが香美市では日常生活の中で地域の方々との自然な関わりの中で培われることは大きな魅力といえます。我が子と話していてこのことに思い至ったときには二人で少し驚いてしまいました。
お子さんの教育環境を考えて移住を検討している方も多いと思います。自然を感じながら子育てをしたいと移住検討中の方に、「香美市での子育てを終えてみたら一生役に立つこんなおまけが付いてきていた」ということが伝われば嬉しいです。
(記事制作:NPO法人いなかみ)