murai2

高知工科大学の麓にある神母ノ木(いげのき)の古民家で、植物を活かした喫茶店「座文」を経営する村井亮介さん。植物の研究室に務めながら、デザインの仕事もこなす村井さんは、自由な生き方を求めて、出身地の香川県で務めていた建築設計事務所を辞め、大学時代を過ごした高知へUターンしてきました。遊びながら価値を見つけ、地域の人と一緒にその価値を磨き、新しい地域をクリエイトする。そんな村井さんに、地域で仕事をするおもしろさ、地域で仕事をするポイント、そして移住者と一緒にやりたいことなどを話していただきました。

対談形式でお届けします。

君はクリエイターになるといいよ

いなかみ
村井さん出身は香川でしたよね?

村井さん
いや、実は生まれは大阪なんですよ。

いなかみ
え!?まさかのシティーボーイ!

村井さん
(笑)でも幼稚園の頃に香川へ移ったので、育ちは香川です。
子どもの頃は山遊びが好きで自然の中でよく遊んでいました。
工作や絵を描いたりするのも好きでしたね。

いなかみ
おぉ。その頃からデザインセンスが磨かれていたわけですね。

村井さん
子どもの頃は明確な想いがあった訳では無いんですけど、結果として好きだった自然やデザインが今の仕事になりましたね。高校の頃、書道の先生に「君はクリエイターになるといいよ」って言われたことがあったんです。高校生の時にはクリエイターなんて仕事聞いた事もなかったですけど、今思うとクリエイターっぽいことをやってるのかもしれませんね。

いなかみ
高校生にクリエイターになれって言う先生も面白いですね。その先生はなぜそう思ったんでしょう?

村井さん
その先生は書道の先生で,見本を見て書く書道ではなくて自由な字体をつくる創作書道をやっていたからですね。かなりアレンジして書いてましたので(笑)

いなかみ
なるほど。その姿は容易に想像できる(笑)
でも大学では建築を学んでいましたよね?どうして建築の道に?

村井さん
高校は工業高校で電子機械をやっていたんですが、どうもチマチマした作業は苦手で、もっと大きいものを作りたい!と思ってから建築に進みました。高知工科大学の社会システム工学科(現在のシステム工学群)に入学して、建築の中でも細部までデザインできる意匠を選考し、卒業後は香川に戻って意匠デザインができる設計事務所に勤めはじめました。

建築を辞めようと思った日

いなかみせっかく希望してた建築の仕事ができたのに、なんで転職したんですか?

村井さん
仕事として建築をやっていると、学生時代の自由な建築とは大きなギャップがあって、お金の制限や施主さんの意見など、社会で働くってまあそういうことなんですけどね。だけど自分が建築や何かをクリエイトする道でもっと自由に仕事をするにはきっと他のスキルが必要だと思ったんです。

いなかみ
それで仕事を辞めちゃった。

村井さん
ええ。でも辞めたというより歩み方を変えたといった方が正しいと思ってます。それで、初めてどこにも所属しない状況になって、すっごく不安になって、このとき初めてスーツ着ました(笑)スーツを着て図書館で勉強していたんですが、ここで出会った本が自分の考えてる事って間違ってないかもって錯覚させたんですよ(笑)。

いなかみ
仕事を辞めてスーツで図書館(笑)なかなかかっこいいじゃないですか。そして本と出会った。

村井さん
はい。岡田斗司夫(オカダトシオ)さんの「ぼくたちの洗脳社会」という本です。岡田さんはエヴァンゲリオンの製作会社を作った人で、自分のことをオタキング(オタクの王)と言うような面白い人なんですが、これまでの社会を踏まえたこれからの社会変化が描かれており、自分の考えている事に近くて、これは予言の書だ!と思ったくらいです。今思えば妄信だったのかもしれないですが、あの時の僕には必要でしたね。今でも岡田さんを尊敬してます。

いなかみ
それで高知に戻ってくることになった。でもなんで高知やったがですか?

村井さん
文化的な要素がこれからは必要だと感じていたので、今度は自分の好きなアートや植物に関する仕事がしたいと思ったんです。じゃあどうやってそれをやろうか?となったとき、大学時代の地域イベント等でお世話になっていたgraffitiというギャラリー兼ミュージアムショップに相談することにして、結果、働ける事になって、高知に戻ることになりました。

いなかみ
大学時代の繋がりがここで活きたわけですね。
もうひとつの植物の研究もそのgraffitiから?

村井さん
いや、植物のきっかけは実はこの店(喫茶座文)なんですよ。ここは元々、別の方がamberというカフェをやっていて、大学生の頃に僕もよく通っていたんです。それで高知に戻ってからも来るようになって、たまたま店にいたお客さんの紹介を受けて出会ったのが、植物の研究者である渡邊先生でした。

いなかみ
高知工科大学の先生ですね。

村井さん
はい。当時は牧野植物園にいらしたんですが、その渡邊先生が谷相というところで農業をしていて、男手が欲しかったんでしょうね。ご一緒させていただく事が増えて、いつの間にかデザインでも仕事をさせていただくようになりました。そういったことが増えて、一緒に植物の研究もさせてもらうようになりました。

村井さんデザインメモ
村井さんの手帳に描かれたデザイン達

論文はあるけど実践の無い大学

いなかみ
人の繋がりってこうやって出来ていくんですね。でも本業のデザインをやりながら、植物の研究もやるようになって、さらには喫茶店の経営(座文)まで始めてしまった訳ですよね。

村井さん
amberが閉店する時に、村井くんこの店使わない?って大家さんから声をかけてもらったこともきっかけではありますが、一番は実践の場がほしかったからなんです。大学って研究はできるんですが、実践の場は無いんです。僕はデザインのスキルを活かせる自分でつくれるコンテンツが欲しかったのと、食用や薬効などがある有用植物の研究を活かせる場が欲しいと思っていました。

いなかみ
村井さんのそのモチベーションの高さ、凄すぎです(笑)本当にいつでも意欲的に仕事をされている印象で、意欲が下がる時なんて無いんじゃないか?って不思議に思うくらいです。

村井さん
いや、それはもちろんスランプの時もありますよ。でもそれでもやり続けるんです。スランプは出来てないからスランプなんですよ。だったら出来るようにするしかない。

いなかみ
そのモチベーションが信じられんのです(笑)

村井さん
(笑)でも本当に疲れたら寝ますよ。寝るのが一番。あと、自分よりすごい人と仕事させてもらっているっていうのも大きいです。そういう人に期待してもらって一緒に働けるのはとても励みになるし勉強にもなる。それでがんばれる。

いなかみ
なるほど。モチベーションが高くなる環境が存在しているんですね。自分の置かれている環境がどうかって、想像以上に大きいですよね。
そんな村井さんが目指している今の目標って何ですか?

地域の「価値」と「人」で新しい地域づくり

村井さん
自分自身のことを言えばある程度、理想に近づいてきたと感じています。最近は通常のデザインだけでなく、まちづくりデザインの仕事も受けられるようになってきたんです。自分の得意分野である植物を活かしつつ、地域の価値を知り、地域の人と関わり、その地域にとって理想的な姿をデザインして提案するような。

いなかみ
村井さんの思い描く社会づくりにチャレンジする機会がでてきたたわけですね。

村井さん
ええ。なので地域にある価値と地域の人がやりたいことを繋いでいくようなことが今の目標かもしれません。そういう意味では、企業のような利益重視の経済ではなく、今で言うSNSのようなゆるやかなコミュニケーションの中で産業づくりをしたいですね。でもこれは初めての試み。失敗も無いし成功も無い。だからこそ大変だけど、全てが自分のため、地域のためになると思っています。

いなかみ
答えの無いチャレンジ。まさに“クリエイター”ですね。

村井さん
岡田斗司夫さんが言うように、今は転換期なんだと思うんです。狩猟の時代があり、農業の時代があり、産業の時代があり、そして情報の時代になった。今はなんとなく、いくら技術が進歩してもこれ以上豊かにはなれないんじゃないか、という諦めの雰囲気を感じます。転換期でみんな不安がっている。でもそれはだめなことじゃなくてチャンスでもあると思うんです。僕はこのチャンスに対するヒントを提示しながら、地域の人と一緒に考えて、新しい価値、新しい地域を創出したいと思っています。

進化する自然共生文化都市

いなかみ
そんな新しい地域を創出する地盤となるのが、ここ香美市ですが、香美市の魅力って何だと思っていますか?

村井さん
「進化する自然共生文化都市」これが香美市のコンセプトに掲げられたことですね。

いなかみ
へぇ、意外。面白いですね。地域の素材よりも市が掲げるコンセプトが魅力と。

村井さん
もちろん、そのコンセプトに適う豊かな自然があることも魅力だと思います。地方は10年遅れているなんて言われますが、これを掲げたことだけで、その10年を取り戻す可能性があると感じていますよ。例えば持続可能な社会って温暖な地域では実現してるところがあって、日本のような寒さもある地域ではなかなか難しいと思うんです。でも自然を活かして進化すればその可能性が生まれてくるかもしれない。このコンセプトにはそんな進化の土壌を感じるんです。

murai3

移住者と香美市で一緒に遊びたい

いなかみ
そんな可能性ある香美市に移住してほしい、というのが本サイトのコンセプトなんですが、村井さんから見て、移住してきた人が仕事をする上で大事なことって何だと思いますか?

村井さん
やっぱりコミュニケーションですね。知らない土地なのできっかけが無いと思われるかもしれませんが、きっかけはたくさんあるんです。自分の仕事はもちろんですが、子どもがいる人なら子どもの話をすることだって、地域と接する良いきっかけになります。

いなかみ
自分で動いてみる、が何より大事ということですね。

村井さん
はい。とは言うものの、いなかみライフがそういうきっかけをサポートしてあげれたらいいですよね。地域にはサークル的なあつまりも結構ありますし、そういうところを紹介してあげるだけでもいいきっかけになると思います。

いなかみ
そうですね。お役にたてるようがんばってみます!あと、村井さん自身が移住者と一緒にやりたいことってあります?

村井さん
香美市で一緒に遊びたいですね!

いなかみ
仕事よりも遊びたい!

村井さん
仕仕事なら限られた人としかご一緒できないですが、遊ぶことは誰とでもできますからね。高知はもっと遊ぶ文化が発達すればいいと思うんです。せっかく川がたくさんあるんだから、海開きのように川開きをやってみてもいいし、ボートや釣りなどもできる。先日初めて渓流釣りをしたんですが、本当に面白かったんですよ。渓流釣りって池と違って動かないといけないんですね。同じ場所で竿振れるのは2回くらいで、後は上流上流へと移動しながら釣っていく。どんどんステージが変わっていくんです。

いなかみ
そういう遊びができるって言うのも香美市の価値ですよね。

村井さん
そうなんです。僕は今、仕事としてデザイや研究をやっていますが、実はあんまり仕事と思っていないんですよ。そういうと怒られそうですけど、もともと好きなことを仕事にしているので、自分のやりたいことを自由にやってる感覚が強い。実は遊びと仕事の境界線ってとても薄いんです。

いなかみ
遊びが仕事になる!田舎らしい価値の作り方ですね。

村井さん
自然をテーマに遊ぶ人が増えれば、その人が楽しいだけではなく、地域も良くなるんです。香美市の遊びプロジェクトもぜひ、いなかみライフでやってください(笑)

いなかみ
最近の若者は自然と向き合えない、なんて意見もありますが?

村井さん
それは遊び方を知らないだけですね。大人が自然の中でセンスのいい遊びをもっとやればいいんです。そしたら子ども達もうらやましがって、必ず一緒にやるようになります。

いなかみ
面白いことをやっていれば自然と引き継がれていく、ということですね。

村井さん
そうやって1つの遊びが広がって、それが1つのまちづくりの手法みたいなものになって、それが1つの仕事になる。仕事になれば、別の地域にも広げていく可能性が生まれる。そんな風に、遊びを通して移住者のみなさんとまちづくりができれば嬉しいです。

いなかみ
移住者はお客さんではなくて、一緒に地域をよくする仲間ですもんね。村井さん、今日は本当にありがとうございました。村井さんはいっぱいネタもってますから、今度はまた別の視点で話を聞かせてくださいね。

村井さん
はい。こちらこそありがとうございました。面白かったです。


喫茶座文

murai5

営業時間 昼 10:00-17:00
定休日 木・金
座数 22席
駐車場 5台
喫煙 テラス席
住所 高知県香美市土佐山田町神母ノ木338-7 【地図を見る
URL http://zabun.biz/

コメントを残す

必須 ※お名前は公開されます。

<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>