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坂本仁さん(37)は、香美市の定住班になって2019年9月で4年目。現在は、「集落活動センターひらやま」全般に関する活動や集落維持・住民の生活支援活動等を主に行っている。香美市にUターンで戻ってくるまでは東京で仕事をしていたという坂本さん。東京での仕事を生かした地域づくり支援員としての取り組みを伺った。

■「でっかい街に飼われている」と感じていた東京時代

 

高知県須崎市出身の坂本さんは須崎工業高等学校を卒業後、お笑い芸人を目指して吉本総合芸能学院・NSCに入学。コンビを組んでお笑い芸人として約4年間活動した後、放送作家に転職し大手出版社の雑誌にライターとして携わり、イベント主催なども行ってきた。また、”街コン”という言葉が周知されていない時代から、坂本さんは地域振興に着目し、高知県で街コン企画を行ったこともあるという。そんな先見の明を持つ坂本さんが高知に帰ってくるきっかけの一つは、東京の街の空気だった。

 

上総「高知に帰ってくるきっかけは?」

 

坂本「満員電車に揺られて、東京で最新の情報ばっかり集めて記事を書いているうちに『あれ、これ俺の役割かな』って思う時があって。別のところの使命があるんじゃないかと思い始めたのがきっかけでしたね。東京ではでっかい街に飼われている感覚がありました。香美市で仕事をしている今では自分自身で動いてる感覚があります」。

■お笑い芸人、放送作家、イベント企画、ライター業を経て香美市の地域づくり支援員へ

 

地域に焦点を当てたイベントを主催するなかで「過疎地域をなんとかしたい」という気持ちが芽生えたという坂本さん。職種は違えど、東京で仕事をしていた時から坂本さん自身の視点は大きく変わらないという。

 

上総「なかなか地方ではできない経験をされていますが、地域づくり支援員と共通する部分はありますか?」

 

坂本「企画を考える構成力なんかは、東京でやっていたことと大きく変わらないですよ。ゼロからイチを生み出すのが好きですし、得意な方だと思っています」。

 

上総「坂本さんが新たに始めた取り組みもあるのでしょうか?」

 

坂本「平山地区は農産物が豊かな一方で、とにかく土砂災害・鳥獣被害が多いです。そこで、鳥獣対策の班を作りました。それと同時に若者たちと青年団を立ち上げて草刈りの事業を始めました。地域の運動会や、県立大学がしてくれていたお祭りなんかを引き継いで、地域のイベントに携わるようになって結束力が高まったと思います」。

 

上総「坂本さんが現場で感じる地域の課題を教えてください」。

 

坂本「そもそもの人口が少ないので、プレイヤーが少ないことです。まずは自分が動かないといけないし、例えば『見守りサービスや配食サービスをやりたい!』って声があっても、動ける人がいない状況ですから、起業したり定住してくれる人を増やしたいですね。でも人を動かすだけの魅力を地域に作らないといけないんですよ。それはすごく、難しいですよね」。

 

上総「簡単ではないですよね。具体的に、定住が必要だと思う瞬間はどんな時ですか?」

 

坂本「毎日ですよ。どんどん地域の方も亡くなっています。地域外からイベントを手伝いに来てくれたり、人手不足だというと手を貸してくれる人がいることにはすごく感謝しています。でも、高望みかもしれないですけど、リアルに溝を掘って草を刈ってくれる、日々の地域の活動に携わってくれる人がほしいんですよ」。

 

上総「関係人口という言葉を最近よく耳にしますが、それだけでは足りないんですね」。

 

坂本「関係人口が増やせていることは救いですけど、その人たちが地域の人たちの生活に入っていけるかというとそうではないから、関係人口だけでは足りないですね。住みたいって言ってくれる人もいるんですよ。でも空き家を貸してもらうまでが難しかったりするんです。僕たちが『貸したい』とどう思わせるかですよね。未来を明るくしていかないといけないですから、やるかやらないかだけですよ」。

 

上総「ありがとうございます。最後に坂本さんの目標を教えてください。」

 

坂本「個人的に、”アップサイクル”をやっています。リサイクルとは違って、使えなくなったものを元の製品よりも高い価値のものに作り変えるんです。廃車になった車のシートベルトをかばんに変えたりとか、海外では既にアップサイクルの店があるんですよ。僕は今、木でアクセサリーを作ってます。地元の人に教える機会を設けて、地域でいろんな形にしていければ事業の1つになるのかなと。そのために、まずは自分で実績を作っていこうと思っています」。

常にアンテナを貼って、新しいことに挑戦していく坂本さん。従来の地域づくり支援員にはない視点で、香美市の課題解決に切り込んでいってほしい。

インタビュー・記事・写真 上総 毬椰

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